弾・丸・翔・子

『そうか、達也さんと一緒か…お前もいい大人だから、何も言わんが、叔母ちゃんが言うように出来ちゃった婚は…。』
 翔子は聞いていられず、プツンと電話を切った。
 孫のジャージ姿で出てきた達也と交代して、翔子が風呂を頂く。出てきた翔子の姿を見て、祖父がしみじみと言った。
「ばあさんがこの家に来た時を、思い出すのう…。」
 濡れた髪にもんぺ姿の翔子。達也はもう我慢できず身を悶えて笑い出した。
「お前なぁ、憶えてろよ…。」
 翔子は、風呂で上気した頬をさらに赤くして達也を睨みつける。
 それでもお祖母ちゃんが用意してくれた田舎料理が食卓に並ぶと、翔子の機嫌は簡単に治った。大根とイカの煮物。出し巻き卵と大根おろし。独特の歯ごたえのお新香。野菜たっぷりの香ばしい味噌汁。優しい湯気が立ちあがる真っ白なご飯。
 達也はお祖父ちゃんからビールを勧められ、一杯だけとグラスを開けたのはいいが、今度はお猪口を渡され日本酒をすすめられる。お祖母ちゃんが、爺ちゃんはただ飲む相手が欲しくて、ご主人をお連れしたようねと、翔子に詫びていたが、翔子は田舎料理の堪能に忙しく、『ご主人を』の部分を訂正するのを怠ってしまった。
 やがて食事も終わり、翔子が片付けを手伝おうとお祖母ちゃんと台所へ連れ立つ間も、お祖父ちゃんと達也の酒盛りは続いていた。お祖母ちゃんがむいた果物を持って戻ると、達也は、畳に大の字で酔い潰れていた。
「ご主人は、酒が弱いのう。」
 物足りなそうに翔子に訴えるお祖父ちゃん。まったく…。こんな情けない事じゃ、達也は酒好きの父にも気に入ってもらえそうにない。ちょっと待って、私はなんてこと考えてるの…。翔子は、頭を振って前言の記憶を頭から振り落とした。
「ばあさんが布団を敷いとったから、おふたりとも部屋で休むがええ。」
「どうも、いろいろご迷惑かけてすみません。」