弾・丸・翔・子

 とにかく、できるだけ翔子を見ないように、彼女の横に座ると達也もスーツの上半身をはだけた。達也のTシャツも汗で濡れていたが、そこから透けて見える肉体の何と貧弱なことか…。確かにこんなショッカーでは副長に勝てるわけが無い。
「バイク起こすの、だいぶ上手くなったわね。」
「そうですか…それでも精一杯ですよ。もっと力つけなくちゃ…。」
 達也は両腕に力瘤を作って左右見比べた。
「力じゃないの、コツなのよ。誰だって200キロのバーベルは持ち上がらないでしょ。でも小さな動を作り出すことができれば、バイクの自重を利用しながらコテの原理で200キロのバイクも立たせることができるの。」
 翔子の言葉に、達也はふと以前出会った華奢なライダーのことを想い出した。彼は半円を描くように身体を動かして、重たいリッターバイクを立ち上げた。その時は奇跡を見たような気持ちになったっけ。
「お腹空いたでしょ。食べなさい。」
 翔子はどこから持ってきたのか、デイパックから、アルミホイルに包まれたおにぎりを取り出して達也に差し出した。
「朝早い出発だったのに、おにぎり作ってきてくれたんですか。感激だー。」
 達也は翔子の手から奪うようにおにぎりを引ったくると、ホイルをむくのももどかしく頬ばった。
「少し塩をきつくしてるからね。」
「おいしいです。」
「中身何だった。」
「しゃけみたいです。」
「ああ、当たりね。何も入っていないスカもあるから…。」
 一気に頬張り過ぎたのか、達也がしゃくりをしながら苦しそうに胸を叩く。翔子は首を横に振りながら、デイバックからミネラルウオーターを取り出して達也に渡した。
「達也…そんなにお腹空いてたの?」
「ええ、朝抜きだし…それにバイクのライディングってやたらお腹すきますね。」
 達也の答えに頬笑みながら、翔子は街の上に広がる空に視線を移した。
「ところでね。昨日副長が病院に来て…。」
 おにぎりを頬張りながら、達也が昨日のコッペイの病室の出来ごとを、楽しそうに話し始めた。
「副長もいいとこありますよね。」
「そう…確かに、あいつ乱暴だけど結構、優しい所あんのよ。特に男にね。目下のメンバー皆に兄貴として慕われていたわ。」
「へー、そうなんですか…。」
 翔子は空から視線を戻し、達也をじっと見つめた。
「ねえ、聞いてもいいかしら?」
「なんでしょうか。」