弾・丸・翔・子

 ショッカーが病室からその姿を消すと、哲平は刀を鞘に納めるように、警棒をホルダーに収める。コッペイは哲平にしがみついた。
「おう、コッペイ。大丈夫か?」
 コッペイは肯く。
「そうか、良かった…でもコッペイ、なんでショッカーと闘わなかったんだ。」
 コッペイは返事のしようがなかった。あんな恐ろしい化け物は到底闘える相手ではない。
「ショッカーを見たら、身体が動かなくなって、胸が痛くなったんじゃないか?」
 図星だった。
「お前は弱虫か?もしショッカーがお母さんを襲ったら、誰が助けるんだ。」
 哲平の厳しい指摘に、コッペイの目に涙が溜まってきた。しばらく様子を見ていた哲平はコッペイを抱き上げた。
「コッペイ、難しい言葉だけど、勇気っていう言葉を知っているか?それはな、心にある力だ。コッペイは前に、病院をひとりで抜け出したが、それは勇気ではない。本当の勇気と言うのは、怖いものや恐ろしいものに立ち向かえる心のことだ。」
 腕の中で泣きじゃくり始めたコッペイの頭を、哲平が優しく撫でた。
「俺はお前が弱虫でないことをちゃんと知っているよ。怖くても手術受けられるよな?それでどんなに激しい闘いでも痛くならない胸を持って、ショッカーを倒せるよな。」
 コッペイが泣きじゃくりながら哲平の腕の中で何度もうなずいた。哲平はその頭をまた優しく撫ぜ続けた。
「桐谷さん、今度はテッペイに何をしたんです。」
 病室に戻ってきたミカは、我が子の泣き顔を見てヒステリックに叫んだ。走り寄って我が子を哲平の腕から奪い返すと鋭い視線で哲平を睨む。
「こんなことが続くと、私にも考えがありますからね。叔父は…。」
「失礼いたしました。職務に戻ります。」
 哲平はミカの言葉を最後まで聞かず、敬礼をして病室を出た。
 病室を出ると、黒タイツもそのままの汗だくの達也が腕を組んで待ち受けている。
「副長、本気で投げ飛ばすなんて…話しが違うじゃないですか。」
 詰め寄る達也に、哲平がすずしい顔で応じた。
「つい本物に見えちまってなぁ…お前の前世はショッカーか?」
 しかし誰の目から見ても、翔子の彼氏である達也への憂さ晴らしであることは明白である。