弾・丸・翔・子

 耳もつんざくほどの奇声を発して、黒い身体に恐ろしいどくろが踊る。コッペイはその化け物を初めて見たのにもかかわらず、ショッカーだと直感した。
「ショック、ショック、ショック、ショック、」
 意味不明な言葉を口走りながらその化け物はコッペイに近づいてきた。恐ろしさの余りコッペイの身体が硬直しベッドの上で動くことができない。鼓動が速まり、胸が痛くなってきた。
「オマエヲ、ツカマエテ、ドレイニシテヤル。ショック、ショック。」
 その化け物の目的を知ったコッペイは、大声で母親に助けを呼ぼうと息を吐くが、声にならない。ショッカーの腕がまさにコッペイのパジャマにかかろうとした瞬間である。
「やめろ、ショッカー。お前の思う通りにはさせないぞ。」
 ドアに白いヘルメットを被った白バイ隊員が颯爽と立っていた。振り向いて驚くショッカー。白バイ隊員がゆっくりとメットを脱ぐと、コッペイの顔がパッと明るくなった。そこに居たのはあのヒーロー哲平だったのだ。
 ショッカーはそれでも、コッペイを連れ出そうと手を伸ばす。すると哲平は、すばやくショッカーとの間合いを詰めるとショッカーの腕を取り、後ろ腕に絞りあげた。そして、痛がるショッカーの首を後ろから羽交い絞めにして地面に叩きつけたのだ。
「うっ」
 床に叩きつけられたショッカーの生のうめき声がした。床でもがくショッカー。やがて、奇声とともに立ちあがると、その目が痛さに潤んでいる。
「ユー・セット・ミー・ア・トラップ(罠にはめたな)ショック、ショック。」
 もちろん哲平もコッペイもショッカーの言っている意味がわからない。もっとも、誰もショッカーの言葉など聞いていないのだ。余裕の笑みでコッペイにアイコンタクトする哲平の雄姿を、コッペイはただひたすら見惚れていた。
 本気モードで飛びかかるショッカー。しかし哲平は余裕でかわすと足を払ってまたショッカーを床に這いつくばらせた。立ちあがったショッカーが次の攻撃に入ろうとした瞬間、哲平は警棒を、音を立てて伸ばして、防御の姿勢を取った。隙のない美しい構えだ。さすがのショッカーも攻撃を諦めた。
「キェーッ!」
 また奇声を上げると、哲平に背中を見せる。その奇声は『憶えてろよ。』と負け惜しみを言っているのだと、コッペイにも解った。