弾・丸・翔・子

「何でもそうなんです。今までしてきたことは自分で本当にしたかったのか。自分でやるって決めたことなのか。いつも悩んでました。そんな朝、自分はブルースの頭を超えていく翔子さんのバイクを見ました。物凄くカッコ良かったでした。ああ、あんな風にバイクに乗りたい。その時初めて、自分でやりたいと思えるものを見つけたんです。」
 達也は食卓にあるお茶を一口飲んだ。
「自分は決して翔子さんの真似をしているのではないですよ。本当にやりたいことを考える機会を、翔子さんが与えてくれているのだと思っています。だから、このチャレンジも自分が本当にやってみたいことなんです。どうかその機会を奪わないでください。」
 翔子は達也の話す瞳を見ながら、彼は本当に純粋なんだと感じた。少し頼りなくはあるが、その瞳には少年の輝きがある。達也は自分をさらけ出すことを恐れず、偽りの無い姿で翔子に接していたのだ。自分は何を恐れていたのだろう。自分も無心で彼に接すればいいのだ。達也の話しを聞くうちに、なにか心のモヤが晴れていく気がした。
「ところで、達也が本当にやりたい事をしているのを、その怖いお父さんは知ってるの?」
 達也の声が急に小さくなった。
「知りません。知ったら許すわけありません。」
「いろいろ言う割には、結局意気地なしの坊ちゃんなのね。」
「そんな…。」
「明後日の土曜にツーリングするから1日開けとくのよ。」
「えっ、ホントですか?」
 心の晴れた翔子は自らの笑顔を隠し、立ちあがって喜ぶ達也にわざと無愛想な表情で箸を差し出した。
「ほら、肉じゃが残ってるわよ。残さないで食べなさい。」
 師匠の威厳は保たなければならない。

『パジャマにジャンパーを羽織った5歳くらいの男の子を港南町交番で保護。迷子になってさまよっていた模様。名前は清野テッペイ。付近で親御さんの問い合わせがあった場合、港南町交番に誘導のこと。』
 交差点で違反監視についていた哲平のインカムに所轄連絡が入った。
「あのテッペイか?」
 哲平は本部に移動許可と取ると、急いで江南町交番へ向かった。