「ヒザでタンクを挟むことが、ニーグリップではないのよ。それは、単に形だけのことで、大事なのは、下半身と一体化したバイクのホールドなのよ。ホールドすることでバイクからのインフォメーションを感じ、その反応を感じてさらにバイクをコントロールしていく…。」
「師匠、禅問はもうやめましょうよ…。」
「とにかく、バイクの動きを体感しましょう。それには低速でのセルフステアがわかりやすいわ。」
翔子はBMWに乗るとエンジンをスタートさせゆっくりと前へ進む。そして、10mくらい進むと極端に速度を落とし、バイクを倒し込むように曲がった。
「いい。だらだら曲がらず、今みたいにパタンと倒れるように曲がるのよ。曲がり方としては、重心を曲がる側に寄せる感じ。大きなアクションは必要ないから。ただ、ハンドルを押さえずに、重心を曲がる側へ。」
達也が翔子についてやってみた。不器用な動きながらも達也は何かを感じたようだ。
「バイクの挙動としては、ハンドルがクット切れるような動きを感じるでしょう。」
達也は翔子の話しも耳に入らないかのように低速でパタンと曲がる練習に没頭した。
「それを感じることができたら、達也。いよいよお互いの動きにシンクロする本当のライディングの始まりよ。」
「おい、哲平。お客さんだぞ。」
倉庫で白バイ磨きとメンテナンスに励む乗務停止中の哲平に、白バイ隊長が声をかけた。油で汚れた顔を上げると、隊長の横に明るい紫を基調とした上品な身なりの女性が立っている。後から聞くとその色はラベンダーというそうなのだが、被った帽子から哲平をのぞく瞳がきらきら輝いていて印象的だった。
「隊に差し入れを頂いたぞ。お前からもお礼をしとけよ。…それでは、失礼します。」
敬礼をした隊長は女性を残して署内に戻っていった。
女性の年齢は無骨な哲平では計り知ることは無理な話だが、強いて予測するとしたらたぶん自分と同じか、もしかしたら年上かもしれない。しかし、なぜあんな貴婦人が俺を訪ねて来るのか?腑に落ちない表情で見つめる哲平に、女性が口を開いた。
「私は清野ミカと申します。」
ミカから発せられた声は透きとおっていて、しかもその声に香りすら感じた。声にもかけられる香水なんてあるのだろうか。
「はじめまして、自分は桐谷哲平です。」
「師匠、禅問はもうやめましょうよ…。」
「とにかく、バイクの動きを体感しましょう。それには低速でのセルフステアがわかりやすいわ。」
翔子はBMWに乗るとエンジンをスタートさせゆっくりと前へ進む。そして、10mくらい進むと極端に速度を落とし、バイクを倒し込むように曲がった。
「いい。だらだら曲がらず、今みたいにパタンと倒れるように曲がるのよ。曲がり方としては、重心を曲がる側に寄せる感じ。大きなアクションは必要ないから。ただ、ハンドルを押さえずに、重心を曲がる側へ。」
達也が翔子についてやってみた。不器用な動きながらも達也は何かを感じたようだ。
「バイクの挙動としては、ハンドルがクット切れるような動きを感じるでしょう。」
達也は翔子の話しも耳に入らないかのように低速でパタンと曲がる練習に没頭した。
「それを感じることができたら、達也。いよいよお互いの動きにシンクロする本当のライディングの始まりよ。」
「おい、哲平。お客さんだぞ。」
倉庫で白バイ磨きとメンテナンスに励む乗務停止中の哲平に、白バイ隊長が声をかけた。油で汚れた顔を上げると、隊長の横に明るい紫を基調とした上品な身なりの女性が立っている。後から聞くとその色はラベンダーというそうなのだが、被った帽子から哲平をのぞく瞳がきらきら輝いていて印象的だった。
「隊に差し入れを頂いたぞ。お前からもお礼をしとけよ。…それでは、失礼します。」
敬礼をした隊長は女性を残して署内に戻っていった。
女性の年齢は無骨な哲平では計り知ることは無理な話だが、強いて予測するとしたらたぶん自分と同じか、もしかしたら年上かもしれない。しかし、なぜあんな貴婦人が俺を訪ねて来るのか?腑に落ちない表情で見つめる哲平に、女性が口を開いた。
「私は清野ミカと申します。」
ミカから発せられた声は透きとおっていて、しかもその声に香りすら感じた。声にもかけられる香水なんてあるのだろうか。
「はじめまして、自分は桐谷哲平です。」



