こんな芸当をガソリン搭載時200キロの車重のあるオフロードモデルでするのだから、ライダーのコントロール能力は並大抵ではない。さすがに横向きになって両輪の浮いたバイクを無事に着地することはできず、転倒してバイクはガードレールに激突。しかし、ライダーはいち早くペダルを蹴って車体から身を離すと、低い姿勢で立ったままアスファルトの上を滑る。鉄を仕込んだ靴底とアスファルトがこすれて赤い火花が散った。まるで映画「マトリックス」のヒーローを目の当たりにしたように達也はただ唖然とライダーを見つめる。そしてライダーはその姿勢で無事静止すると、何事も無かったようにブルースに近寄りその頭をなぜた。
ブルースは身体をライダーにすりよせて、嬉しそうにしている。達也はあらためてそのライダーの姿を眺めた。赤いヘルメットに赤いチーフ。肩幅の割にはウエストのしまった皮のライダースジャケットを身にまとい、引き締まったお尻と長い脚が強調されるピッタリのデニムのズボン。そして黒光りする長靴。立ち上がると思いのほか細身である。次第に達也の目の光が、驚愕から憧憬へと変わっていく。
ライダーは、ブルースの首輪を持って達也に近づいてきた。ブルースの首輪を達也に握らせると、ライダーはグローブを外す。その指先は、細い上に爪が整えられ、いかつい出で立ちに反してとても繊細に感じた。
「自分の犬ぐらい、ちゃんと面倒見なさい。」
そう言いながらヘルメットに手を掛けて持ち上げる。すると、日差しに透けると赤く輝く艶やかな長い髪がヘルメットから飛び出してきた。よく見ればライダースジャケットの胸も少し盛り上がっている。髪の間から覗く瞳が、少し怒気を含み、それがブラウンの瞳により赤みを増して情熱的に輝く。潤う唇とすこし鋭角的ではあるが柔らかい線で描かれた顎が、男性的な出で立ちに反発して、その女性としての美しさを際立てていた。ネオではなく、トリニティなのか…。達也は彼女を見てそう思った。
赤いヘルメットを腕に掛けて、自分のバイクに戻るトリニティ。達也はブルースにリードをつけると、慌てて彼女の後を追う。信じられないことに、トリニティは、200キロもあるバイクを難なくひょいと立ちあがらせた。カウルの一部が割れ、片方のハンドルミラーがだらしなく垂れ下がる。しかし、セルボタンを押すとエンジンは問題なくかかった。
ブルースは身体をライダーにすりよせて、嬉しそうにしている。達也はあらためてそのライダーの姿を眺めた。赤いヘルメットに赤いチーフ。肩幅の割にはウエストのしまった皮のライダースジャケットを身にまとい、引き締まったお尻と長い脚が強調されるピッタリのデニムのズボン。そして黒光りする長靴。立ち上がると思いのほか細身である。次第に達也の目の光が、驚愕から憧憬へと変わっていく。
ライダーは、ブルースの首輪を持って達也に近づいてきた。ブルースの首輪を達也に握らせると、ライダーはグローブを外す。その指先は、細い上に爪が整えられ、いかつい出で立ちに反してとても繊細に感じた。
「自分の犬ぐらい、ちゃんと面倒見なさい。」
そう言いながらヘルメットに手を掛けて持ち上げる。すると、日差しに透けると赤く輝く艶やかな長い髪がヘルメットから飛び出してきた。よく見ればライダースジャケットの胸も少し盛り上がっている。髪の間から覗く瞳が、少し怒気を含み、それがブラウンの瞳により赤みを増して情熱的に輝く。潤う唇とすこし鋭角的ではあるが柔らかい線で描かれた顎が、男性的な出で立ちに反発して、その女性としての美しさを際立てていた。ネオではなく、トリニティなのか…。達也は彼女を見てそう思った。
赤いヘルメットを腕に掛けて、自分のバイクに戻るトリニティ。達也はブルースにリードをつけると、慌てて彼女の後を追う。信じられないことに、トリニティは、200キロもあるバイクを難なくひょいと立ちあがらせた。カウルの一部が割れ、片方のハンドルミラーがだらしなく垂れ下がる。しかし、セルボタンを押すとエンジンは問題なくかかった。



