「翔子ちゃんにいいかなって思って…。」
「用事ってこれか…いいねぇ。」
父親が笑顔で、叔母の茶碗に入っていたお茶をグイッと飲み干した。
「これって…いわゆる…お見合い写真ってやつ?」
アルバムから異臭が放たれているかのごとく、翔子は顔をしかめた。
「この人、銀行員でね…まじめな人みたいよ。」
「ますますいいね。」
「翔子ちゃんももういい年だし…。」
「そうだ、そうだ。」
「30過ぎてから出産てのもねぇ…。そろそろ考えないといけないでしょ。」
「まったくだな…。どうだ翔子、見合いも面倒だ。もう決めて結婚しちまえ。」
「兄さんは黙ってて!」
ほろ酔い加減の父を叔母が叱った。
「どう?一度会ってみない?」
「叔母ちゃん…。」
うつむいた翔子の声と肩が小刻みに震えていた。
「叔母ちゃんに逆らうつもりはないけど…こればっかりは…。」
翔子はもう半ベソになっている。弾丸翔子も叔母の前ではただの小娘でしかないのだ。
達也がわざわざ自宅から遠い場所にある中古バイク屋を選んだのには理由がある。近所では自分を知る人の目が多く、買ったことが家族にバレそうで心配だということ。そしてもうひとつの理由は、処女航海となるバイク屋からバイクを隠す置き場までの初めてのライディングを、充分楽しみたかったからだ。もともと達也は目的地の無いドライビングは好きではない。4輪でも2輪でも、ゴールがあることで達也は安心できる。
中古バイクの情報誌に掲載される大量の写真の中から、達也が選んだのは1996年初車検登録のヤマハXJR1200だ。とにかく安かった。店頭に並ぶ中古のバイクは、なぜか13000キロから18000キロ走行のバイクが多い。例にもれず、達也が選んだバイクも16000キロ走行。折角の大型2輪免許なんだから、リッターバイクにこだわり、しかも30万代で安価に楽しもうとしたらこの手のバイクしかない。別にお金に困っていたわけではないが、自分の初バイクにはこれぐらいが相応しいだろうと勝手に決めつけていた。
納車の日。2輪の色に合わせて買ったシルバーのヘルメットを被り、太めのシートにまたがると、さすがの重量感に心が躍る。セルボタンを押すと、股間に野太い振動が伝わり、心臓の高鳴りも絶頂状態。
「お気をつけて。」
「用事ってこれか…いいねぇ。」
父親が笑顔で、叔母の茶碗に入っていたお茶をグイッと飲み干した。
「これって…いわゆる…お見合い写真ってやつ?」
アルバムから異臭が放たれているかのごとく、翔子は顔をしかめた。
「この人、銀行員でね…まじめな人みたいよ。」
「ますますいいね。」
「翔子ちゃんももういい年だし…。」
「そうだ、そうだ。」
「30過ぎてから出産てのもねぇ…。そろそろ考えないといけないでしょ。」
「まったくだな…。どうだ翔子、見合いも面倒だ。もう決めて結婚しちまえ。」
「兄さんは黙ってて!」
ほろ酔い加減の父を叔母が叱った。
「どう?一度会ってみない?」
「叔母ちゃん…。」
うつむいた翔子の声と肩が小刻みに震えていた。
「叔母ちゃんに逆らうつもりはないけど…こればっかりは…。」
翔子はもう半ベソになっている。弾丸翔子も叔母の前ではただの小娘でしかないのだ。
達也がわざわざ自宅から遠い場所にある中古バイク屋を選んだのには理由がある。近所では自分を知る人の目が多く、買ったことが家族にバレそうで心配だということ。そしてもうひとつの理由は、処女航海となるバイク屋からバイクを隠す置き場までの初めてのライディングを、充分楽しみたかったからだ。もともと達也は目的地の無いドライビングは好きではない。4輪でも2輪でも、ゴールがあることで達也は安心できる。
中古バイクの情報誌に掲載される大量の写真の中から、達也が選んだのは1996年初車検登録のヤマハXJR1200だ。とにかく安かった。店頭に並ぶ中古のバイクは、なぜか13000キロから18000キロ走行のバイクが多い。例にもれず、達也が選んだバイクも16000キロ走行。折角の大型2輪免許なんだから、リッターバイクにこだわり、しかも30万代で安価に楽しもうとしたらこの手のバイクしかない。別にお金に困っていたわけではないが、自分の初バイクにはこれぐらいが相応しいだろうと勝手に決めつけていた。
納車の日。2輪の色に合わせて買ったシルバーのヘルメットを被り、太めのシートにまたがると、さすがの重量感に心が躍る。セルボタンを押すと、股間に野太い振動が伝わり、心臓の高鳴りも絶頂状態。
「お気をつけて。」



