次郎は哲平の耳タコ話しにそっぽを向いて手酌で飲み始めた。
「警察官になって、まず交通取り締まりをやって成績を上げ、上司の推薦を取り付けないといけないんです。」
「そりゃぁ、検挙数はいくらでも伸ばせるよ。俺たちの集会の場所と時間を知ってるんだから…。」
次郎のちゃちゃにも意を介せず、哲平は話しを進める。
「推薦されたら『養成所』で訓練を受けるんですが、訓練は1年に1度、限られた人数しか参加できません。訓練にたどり着くまでがすでにひとつの難関なんですよ。わかります?」
先生はグラスを手にうなずく。
「訓練期間は4週間。地獄の特訓でした。ここで白バイ隊員に必要な技術と精神を徹底的に叩き込まれるんですが、各カリキュラムの終了ごとに試験があり、合格レベルに達していない者は、途中だろうがなんだろうが容赦なく元の部署に戻されちゃうんです。」
「そんな厳しい訓練をこなしてきたのか…。哲平くんもバイクとなると命がけの根性を発揮するね。そのガッツがほんの少しでも勉強に向けられていたら…。」
「いえ先生…。」
昔の自分への説教が始まりそうになったので、哲平は慌てて言葉を続ける。
「無事に養成所出たからって、そう簡単には白バイに乗れないんですよ。それから白バイ隊の部署に配属されて、乗務以外の後方の仕事を経験した後に、やっとこさ乗務できるんです。先生、乗務できる迄、いったい何台のバイクを洗車したと思います?」
「たいしたもんだね。バイクの腕前もだいぶ上がったんだろう。」
「確かに、技術的要素は叩きこまれましたね。」
「それじゃ、お国から仕込まれたプロライダーにお願いがあるんだが…。」
「なんです?」
「うちの翔子の鼻をへし折って、バイクから引きずり降ろしてくれないか。」
「えっ?」
「翔子もいい年になったのに、未だに真っ赤なヘルメットを脱ごうとしない。兄が死んで余計バイクにのめり込んでいるようなんだ。あれじゃいつまでたっても嫁に行けないだろ。」
「しかし先生。翔子さんはバイク仲間になんて呼ばれてるか知ってます。」
次郎が会話に割り込んできた。
「いや。」
「弾丸翔子ですよ。」
「物騒な名前だな。」
「普通に上手いぐらいのバイク乗りじゃ、翔子さんにはついて行けないですよ。」
「だから、こうして哲平君にお願いしているんじゃないか。」
「警察官になって、まず交通取り締まりをやって成績を上げ、上司の推薦を取り付けないといけないんです。」
「そりゃぁ、検挙数はいくらでも伸ばせるよ。俺たちの集会の場所と時間を知ってるんだから…。」
次郎のちゃちゃにも意を介せず、哲平は話しを進める。
「推薦されたら『養成所』で訓練を受けるんですが、訓練は1年に1度、限られた人数しか参加できません。訓練にたどり着くまでがすでにひとつの難関なんですよ。わかります?」
先生はグラスを手にうなずく。
「訓練期間は4週間。地獄の特訓でした。ここで白バイ隊員に必要な技術と精神を徹底的に叩き込まれるんですが、各カリキュラムの終了ごとに試験があり、合格レベルに達していない者は、途中だろうがなんだろうが容赦なく元の部署に戻されちゃうんです。」
「そんな厳しい訓練をこなしてきたのか…。哲平くんもバイクとなると命がけの根性を発揮するね。そのガッツがほんの少しでも勉強に向けられていたら…。」
「いえ先生…。」
昔の自分への説教が始まりそうになったので、哲平は慌てて言葉を続ける。
「無事に養成所出たからって、そう簡単には白バイに乗れないんですよ。それから白バイ隊の部署に配属されて、乗務以外の後方の仕事を経験した後に、やっとこさ乗務できるんです。先生、乗務できる迄、いったい何台のバイクを洗車したと思います?」
「たいしたもんだね。バイクの腕前もだいぶ上がったんだろう。」
「確かに、技術的要素は叩きこまれましたね。」
「それじゃ、お国から仕込まれたプロライダーにお願いがあるんだが…。」
「なんです?」
「うちの翔子の鼻をへし折って、バイクから引きずり降ろしてくれないか。」
「えっ?」
「翔子もいい年になったのに、未だに真っ赤なヘルメットを脱ごうとしない。兄が死んで余計バイクにのめり込んでいるようなんだ。あれじゃいつまでたっても嫁に行けないだろ。」
「しかし先生。翔子さんはバイク仲間になんて呼ばれてるか知ってます。」
次郎が会話に割り込んできた。
「いや。」
「弾丸翔子ですよ。」
「物騒な名前だな。」
「普通に上手いぐらいのバイク乗りじゃ、翔子さんにはついて行けないですよ。」
「だから、こうして哲平君にお願いしているんじゃないか。」



