今日も疲れた目を瞬きながら、砂ぼこりの舞い上がる砂漠の向こうを眺めている。薬品のストックが底をついて、その補充を待っているのだ。その薬品が補充されたところで、病やけがに苦しむ人々の数に比べれば焼け石に水。結局麻酔の無い手術を受ける患者や栄養が取れない乳児の狭間で、医者でありながら何も出来ない自分に気付く。今自分ができるベストを尽くそうと何度も言い聞かせるが、ここにやってきた初志がくじけそうになっている事も事実だった。
達也が眺める遠い先に砂煙が立った。やがて、その砂煙から一台のバイクが姿を現した。過酷な環境を走ってきたのだろう。バイクもヘルメットも泥だらけだ。バイクが到着し、ライダーが荷台に積んだ箱を持って達也のところにやってきた。
「Good job(ご苦労さん)」
そう言って達也が箱を受け取り、中身を確認する。ライダーが受領書を差し出して、達也にサインを求めた。達也がサインをして診療室に戻ろうとすると、ライダーが彼の肩を手で押さえ、もうひとつ荷物があると指を一本立てた。何かと思って、達也が立ち止まるとライダーは、手に持っていたバイクのキーを達也に差し出す。
達也は戸惑いながらキーを見つめていたが、ハッと思いあたってライダーのメットの埃を拭う。真っ赤な色が現れた。そしてライダーがゆっくりとメットを脱ぐと、そこから長い髪が懐かしい輝きを放ちながら飛び出してきた。やはり翔子だった。1年間のアメリカの旅はどんな旅だったんだろう。前にも増して、凛とした女性らしい美しさに溢れている。
「いい加減にしてよ。南スーダンまでバイクを返しに来るはめになるなんて。あたし聞いてないわよ、まったく。」
翔子の笑顔が強い南スーダンの日差しに弾けた。
「ほらキーを受け取ったら、さっさとこっちの受取書にもサインして。」
達也が見るとその受取書は婚姻届だった。もう妻になる人の欄に翔子の署名がある。
「翔子さん…プロモーズくらいさせてくださいよ。」
翔子は半泣きの達也の肩を優しく抱いた。
それから翔子は達也を手伝いながら南スーダンの診療施設で過ごした。翔子の登場で勇気を盛り返した達也は、無事1年間の任期を終えて、翔子と手を握りながら帰国する。達也は翔子のテールを追う癖が、まだまだ抜けないらしい。【了】
pg. 1
達也が眺める遠い先に砂煙が立った。やがて、その砂煙から一台のバイクが姿を現した。過酷な環境を走ってきたのだろう。バイクもヘルメットも泥だらけだ。バイクが到着し、ライダーが荷台に積んだ箱を持って達也のところにやってきた。
「Good job(ご苦労さん)」
そう言って達也が箱を受け取り、中身を確認する。ライダーが受領書を差し出して、達也にサインを求めた。達也がサインをして診療室に戻ろうとすると、ライダーが彼の肩を手で押さえ、もうひとつ荷物があると指を一本立てた。何かと思って、達也が立ち止まるとライダーは、手に持っていたバイクのキーを達也に差し出す。
達也は戸惑いながらキーを見つめていたが、ハッと思いあたってライダーのメットの埃を拭う。真っ赤な色が現れた。そしてライダーがゆっくりとメットを脱ぐと、そこから長い髪が懐かしい輝きを放ちながら飛び出してきた。やはり翔子だった。1年間のアメリカの旅はどんな旅だったんだろう。前にも増して、凛とした女性らしい美しさに溢れている。
「いい加減にしてよ。南スーダンまでバイクを返しに来るはめになるなんて。あたし聞いてないわよ、まったく。」
翔子の笑顔が強い南スーダンの日差しに弾けた。
「ほらキーを受け取ったら、さっさとこっちの受取書にもサインして。」
達也が見るとその受取書は婚姻届だった。もう妻になる人の欄に翔子の署名がある。
「翔子さん…プロモーズくらいさせてくださいよ。」
翔子は半泣きの達也の肩を優しく抱いた。
それから翔子は達也を手伝いながら南スーダンの診療施設で過ごした。翔子の登場で勇気を盛り返した達也は、無事1年間の任期を終えて、翔子と手を握りながら帰国する。達也は翔子のテールを追う癖が、まだまだ抜けないらしい。【了】
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