ドナリィンの恋

 ともあれ今日は、ドナのレポート制作のために、佑麻の父の病院へ連れて行ってもらう約束になっていた。大学のカリキュラムも最後のレポート制作を残すのみになり、ドナは『日本との看護の相違と相似から考える看護のあるべき姿』というテーマで取組むことにした。レポート制作が終われば、あとは帰国の日を待つだけとなる。帰国の日と帰国後のことについては、ドナも佑麻も話題にすることはなかった。練習が終わった佑麻は、ドナが待つ観客席へ。ふたりは麻貴の冷たい視線に気づくこともなく、バイクにまたがって病院へ向かった。

「お前が呼ばれないのに病院へくるなんて珍しいな。」
 外来ロビーで兄から、佑麻は声をかけられた。
「いやぁ、看護師志望の友達がいて、医療現場の見学をアレンジしたのさ。」
「ふーん。友達ってあの娘か?」
 兄はナースステーションで看護師と話しているドナをあごで指す。
「ああ。」
「また毛色の変わった娘を連れてきたな。迷惑かけてないだろうな。」
「事前に病院長と看護師長に承諾もらってるよ。」
 しばらく兄はドナを眺めていたが、
「おまえも、あの娘くらい医療に関心を持ってくれればいいのにな。」
 また説教が始まるのかと佑麻は身構えたが、兄を呼ぶ病院のアナウンスに助けられた。
「またあとでな。」と言い残した兄は足早に診療室へ歩いていった。
 今度はナースの制服の胸に研修バッチをつけたドナが、佑麻の方にやってきた。
「佑麻の病院、すばらしい。I’ve never seen this kind of machines in the Philippines. It’s very high technology. All of the rooms are clean and in order. And system and rules are well organize and under control.
(見たこともないような医療機器もあるし、どの部屋も清潔で機能的だし、電子カルテから支払いまで、システムが完備しているわ。)」
「僕の病院じゃないよ。」
「Having a hospital like this , maybe we don’t need a doctor or nurse to get cure.