ドナリィンの恋

(どなたか、私のダンスパートナーが誰だった教えてくれないかしら。)」
 彼女の一声で、ホールの全員が佑麻を見た。彼はぎょっとして硬直する。そして、そんな彼を残し、ドナはまっすぐ顎をあげて、両肩を振りながらホールの出口へと進んで行った。

 外へ出たドナの手首を取ったのは、追ってきた佑麻だった。
「Wait a second, Donna !(ちょっとまって、ドナ!)」
「Don't touch me!(触らないで!)」ドナは彼の手を振り払う。
「Please(待ってくれよ。)」佑麻がまた片腕をとる。
「No, I have to go home.(いやよ。もう、帰るんだから。)」
 しかし、今度は両腕を取られてドナは身動きできなくなっていた。彼女は佑麻の目を睨みつけた。自然と涙が溢れてきた。
「Why you bring me here? Do you know what I've been through just to be with you now?
(なぜ私を誘ったの?わたしは自分のすべての勇気を振り絞ってついてきたのよ。)」
 ドナの涙を見ながらも、佑麻は何も答えなかった。
「If you shame to be with me, you should not invite me!
(私がそばにいるのが恥ずかしいなら、誘わなければよかったのよ。)」
「I see, Donna. I will drive you home. Please get in.
(わかったよ、ドナ。家まで送って行くよ。だから、頼むから車に乗ってくれ。)」

 シートのドナは、佑麻にそっぽを向くように外を眺めていたが、涙で目が曇り何も見えていなかった。たったひとりで日本人だけのパーティーへ出席することに、怖れがなかったわけではない。しかし一方では、佑麻に承諾の返事を伝えて以来、わくわくしながら今夜を迎えたのも事実だ。自分は佑麻に何を期待していたのだろう。今なんでこんなに悲しくなるのか、自分でもよくわからなかった。
「Donna, we are here.(ドナ。着いたよ。)」
 佑麻に助手席のドアを開けられて、ドナは我に返った。外気がドナの頬にあたる。しかしそこは彼女の家の前ではなかった。
「Where am I?(ここはどこ?)」
 不安になったドナの手を取って、佑麻が言った。