オキクの復讐

「ラブホテル入った時、小銭が無いって言ったら、釣銭がでたら恥ずかしいって、自分の財布からじゃらじゃら小銭出してた。」
 希久美の振りおろした右膝への一撃で、泰佑は地面に片膝をついた。
「そう言えば、ぼこぼこ動くベットが珍しいってはしゃいでたっけ。」
 希久美はもう一方の膝を打った。泰佑は、たまらず両膝を折って跪く。
「それに、ガラス張りのバスルームが恥ずかしいから、俺に目隠ししたよな。」
 棒がもう一度泰佑の肩に打ちおろされる。もう泰佑はふらふらだ。
「馬鹿だよな、お前。枕元にあったコンドームの袋を見て、ティーパックだと言い張ってた。」
 口をふさぐために、希久美は棒を泰佑の口めがけて振り払った。口の中が血で真っ赤になった。それでも泰佑は喋るのをやめなかった。
「覚えているか?いざベットに運んで強く抱きしめたら、お前、気を失いやがって。」
 ついに希久美は、泰佑の頭に致命的な一撃を見舞った。泰佑はついに、地面に倒れた。ぼろぼろのスーツのあちこちのほころびから、血がにじんでいる。地面にあおむけに倒れながらも息も絶え絶えに、泰佑が最後のコメントを吐いた。
「まだ…高校生だった俺が…気を失っている可愛い女の子を…だく勇気なんか…あるわけないだろう。からだの変化が…確認できたら…そのまま帰ったの…知ってた?」
 そのコメントを聞いて、希久美の体中の血液が逆流した。
「このばかやろー。お前なんか死んじまえっ。」
 希久美は渾身の力を込めて、10振目を打ちおろした。棒は、泰佑の頭の寸前のところで地面にあたりはじけ飛ぶ。棒を激しく振り回していた希久美の手は、もう真っ赤にはれていた。荒い息をしながら、空を仰いだ。ラブホテルで何があったにしろ、この男は私に悲惨な10年を過ごさせたことに間違いはない。
 泰佑はもう動かなかった。しかし希久美は泰佑の心配などまったくしなかった。こんな奴死んで当たり前だ。希久美は振り返えると、地面に倒れる泰佑を残し校門に向かって歩き始めた。やがて、希久美は不思議な現象に気付く。ホームベース上で倒れている泰佑から離れれば離れるほど、足が重くなっていくのだ。それでも、希久美は自分を励まして足を動かした。泰佑の引力の及ばぬところへ、早く脱出しなければ。もう少しでグランドを抜けようとした時、その声が希久美の耳に届いた。
「ヘーイ、外野ぁー。」