踵を返して部屋に逃げ込もうとする希久美の手を、泰佑が掴んだ。
「お前、希久美になんてことするんだ!」
娘を助けたい一心で、義父が握った拳を泰佑の顔に殴りつけた。泰佑は避けもせず、義父の拳固を受けた。泰佑の口から流れる血があごを伝わってワイシャツの襟を赤く染める。しかしそれでも、希久美をつかむ手も離そうとしない泰佑に、もう一発見舞おうと、義父が拳固を振り上げた時、希久美が自らの身体を泰佑と義父の間に投げだした。泰佑が希久美の身体を抱きとめると、義父を正視して赤く染まった口を不自由に動かしながら言った。
「どうか、少しだけお嬢さんとお話をさせてください。少しだけでいいんです。」
泰佑の迫力に押され、義父はいいとも、ダメとも言えなかった。義父が動きを止めたことを確かめると、泰佑は希久美の腕を持って外に連れ出していった。玄関を出る時に、石嶋と出くわした。
「石嶋、お前には悪いが、譲れないんだ。」
そう言い残して泰佑は希久美の腕を引いて出ていった。
石嶋はふたりの後ろ姿を見送ると、事態が飲み込めないままとりあえず青沼専務に会うために、家の中に入っていった。玄関で青沼専務が奥さんになだめられている。
「俺がお前の家に始めて行った時も、あんな目つきしていただって?嘘だろ。勘弁してくれよ。希久美、大丈夫かな。」
希久美を追おうとしている義父の袖を、希久美の母は離そうとしない。義父は母になだめられながら、ようやく石嶋の存在に気付いた。
「あっ、石嶋君。来てたのか…。」
「何かあったんですか?」
「いや…。すまんが今日はこのまま帰ってくれるか。この償いは必ずするから…。」
石嶋は、希久美とのことについて、自分の会社人生を賭してまでも、青沼専務の意思と違った決着をつけにきたのだが…。もしかしたら泰佑に助けられたのかもしれないと思った。
希久美は腕を引かれている間中、思いつく限り、ありとあらゆる罵詈雑言を泰佑に浴びせていた。泰佑は希久美を近くの小学校のグランドに連れ出して、ようやく手を離した。泰佑はバックネットに立てかけてあった木製のトンボを手にすると、膝を使って柄を折ろうとした。木製とはいえ、比較的太い角材の柄はなかなか折れない。そのうちスーツのズボンも破れ手も赤くなってきた。
「あんた、何やってんの?」
「お前、希久美になんてことするんだ!」
娘を助けたい一心で、義父が握った拳を泰佑の顔に殴りつけた。泰佑は避けもせず、義父の拳固を受けた。泰佑の口から流れる血があごを伝わってワイシャツの襟を赤く染める。しかしそれでも、希久美をつかむ手も離そうとしない泰佑に、もう一発見舞おうと、義父が拳固を振り上げた時、希久美が自らの身体を泰佑と義父の間に投げだした。泰佑が希久美の身体を抱きとめると、義父を正視して赤く染まった口を不自由に動かしながら言った。
「どうか、少しだけお嬢さんとお話をさせてください。少しだけでいいんです。」
泰佑の迫力に押され、義父はいいとも、ダメとも言えなかった。義父が動きを止めたことを確かめると、泰佑は希久美の腕を持って外に連れ出していった。玄関を出る時に、石嶋と出くわした。
「石嶋、お前には悪いが、譲れないんだ。」
そう言い残して泰佑は希久美の腕を引いて出ていった。
石嶋はふたりの後ろ姿を見送ると、事態が飲み込めないままとりあえず青沼専務に会うために、家の中に入っていった。玄関で青沼専務が奥さんになだめられている。
「俺がお前の家に始めて行った時も、あんな目つきしていただって?嘘だろ。勘弁してくれよ。希久美、大丈夫かな。」
希久美を追おうとしている義父の袖を、希久美の母は離そうとしない。義父は母になだめられながら、ようやく石嶋の存在に気付いた。
「あっ、石嶋君。来てたのか…。」
「何かあったんですか?」
「いや…。すまんが今日はこのまま帰ってくれるか。この償いは必ずするから…。」
石嶋は、希久美とのことについて、自分の会社人生を賭してまでも、青沼専務の意思と違った決着をつけにきたのだが…。もしかしたら泰佑に助けられたのかもしれないと思った。
希久美は腕を引かれている間中、思いつく限り、ありとあらゆる罵詈雑言を泰佑に浴びせていた。泰佑は希久美を近くの小学校のグランドに連れ出して、ようやく手を離した。泰佑はバックネットに立てかけてあった木製のトンボを手にすると、膝を使って柄を折ろうとした。木製とはいえ、比較的太い角材の柄はなかなか折れない。そのうちスーツのズボンも破れ手も赤くなってきた。
「あんた、何やってんの?」



