今日テレサにあった。オリンピックへ向けて、女性の強化選手を取り上げた編集タイアップを申し入れてきたのだ。企画は受け入れられたが、別れ際、泰佑の顔をじっと見つめて言ったテレサの言葉が胸に引っ掛かっていた。
『男って、ほんと馬鹿よね…。』
「そうさ、馬鹿で結構。要は顔を前に向ければいいんだ…。」
許してはもらえなかったが、菊江は天国に帰って行った。オキクへの気持ちには蓋をした。ふたりとも素晴らしい女性だった。一生ふたりのような女性と出会えないかもしれない。でも、可能性だけで十分だ。明るく生きていける。泰佑は、菊江とも、希久美とも、ちゃんと決別して、出直すべきだと考えた。まず何からやろう。生身のオキクとは今まで通り距離を開けていれば、逢わないようにすることができるだろう。しかし、幽霊の菊江とはそうもいかない。そうだ、夢で逢わないように、後生大事に抱えていた菊江の手紙をちゃんと弔うことにしよう。泰佑は、菊江の手紙を取り出すために、本棚からアルバムを取り出した。そしてアルバムを開くと、手紙の代わりに一枚の紙切れがひらひらと舞落ちた。手にとって紙きれのメッセージを読んだ。
『ばかやろう!死んじまえ!』
泰佑はしばし呆然とした。なぜ手紙が無くて、このメッセージがはさんであったのか必死に考えた。見覚えのある字だ。今まで聞いた言葉の断片の数々が、今まで見たシーンの断片の数々が、無作為に蘇っては、竜巻に吸い込まれるようにある方向に向かって収束していく。そしてようやく、テレサの言葉の本当の意味に気がついた。
希久美の玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっと、石嶋君かな。やけに早いな…。ほら希久美出迎えるぞ。」
結局義父に逆らえなかった希久美が、嫌々リビングのソファーから立ちあがった。ここで石嶋と逢ってどうするつもりもない。義父が何と言おうと、石嶋が何と言おうと、来た時と同じ状況で帰ってもらおう。希久美はそれだけを考えていた。
義父が玄関のドアを開けて招き入れた青年の顔を見て、希久美は硬直した。
「君は誰だ?」
驚いた義父が強い語気で青年を誰何する。
「石津泰佑と言います。」
「何者だ?」
「お嬢さんの会社の同僚です。」
「何しに来たんだ?」
「小川菊江さんである青沼希久美さんに逢いに参りました。」
「お義父さん、そんなやつ追い出して!」
『男って、ほんと馬鹿よね…。』
「そうさ、馬鹿で結構。要は顔を前に向ければいいんだ…。」
許してはもらえなかったが、菊江は天国に帰って行った。オキクへの気持ちには蓋をした。ふたりとも素晴らしい女性だった。一生ふたりのような女性と出会えないかもしれない。でも、可能性だけで十分だ。明るく生きていける。泰佑は、菊江とも、希久美とも、ちゃんと決別して、出直すべきだと考えた。まず何からやろう。生身のオキクとは今まで通り距離を開けていれば、逢わないようにすることができるだろう。しかし、幽霊の菊江とはそうもいかない。そうだ、夢で逢わないように、後生大事に抱えていた菊江の手紙をちゃんと弔うことにしよう。泰佑は、菊江の手紙を取り出すために、本棚からアルバムを取り出した。そしてアルバムを開くと、手紙の代わりに一枚の紙切れがひらひらと舞落ちた。手にとって紙きれのメッセージを読んだ。
『ばかやろう!死んじまえ!』
泰佑はしばし呆然とした。なぜ手紙が無くて、このメッセージがはさんであったのか必死に考えた。見覚えのある字だ。今まで聞いた言葉の断片の数々が、今まで見たシーンの断片の数々が、無作為に蘇っては、竜巻に吸い込まれるようにある方向に向かって収束していく。そしてようやく、テレサの言葉の本当の意味に気がついた。
希久美の玄関の呼び鈴が鳴った。
「おっと、石嶋君かな。やけに早いな…。ほら希久美出迎えるぞ。」
結局義父に逆らえなかった希久美が、嫌々リビングのソファーから立ちあがった。ここで石嶋と逢ってどうするつもりもない。義父が何と言おうと、石嶋が何と言おうと、来た時と同じ状況で帰ってもらおう。希久美はそれだけを考えていた。
義父が玄関のドアを開けて招き入れた青年の顔を見て、希久美は硬直した。
「君は誰だ?」
驚いた義父が強い語気で青年を誰何する。
「石津泰佑と言います。」
「何者だ?」
「お嬢さんの会社の同僚です。」
「何しに来たんだ?」
「小川菊江さんである青沼希久美さんに逢いに参りました。」
「お義父さん、そんなやつ追い出して!」



