「だったら、最初から産まなければいいんだ。産みさえすれば、子供は勝手に育つと思い込んでる。いいや、そう思い込んでくれる方がよっぽどましかも知れない。だって、その子の母親は産んでることすら忘れてるんだよ。」
泰佑の目尻から、大粒の涙が一筋流れた。
「そりゃそうだよな…。その子の存在自体を忘れてるんだから、その子がいくら呼んでも、見てもくれないし、来てくれるはずもない。」
そうよ、全部吐きだしなさい。息を荒くして語る泰佑だが、希久美はそれを押さえようとはしなかった。
「女なんてみんなそうだ。自分にやりたいことができれば、他のことは簡単に忘れる。自分の産んだ子さえ忘れるくらいなんだから、男のことを忘れるなんて朝飯前だ。しかも心に波風をまったくたてずにやってのける。そんな相手を同じ人間と思えるか?自分に言わせれば妖怪だよ。妖怪相手にセックスなんか出来るわけがない…。」
ここだ、ここが核心だ。泰佑の話を聞いている3人がみな、そう直感した。希久美が叫んだ。
「でも私とは出来たわ。」
泰佑が思わず希久美の顔を見上げる。
「そうよ、出来て当たり前だわ。だってあたし2年も先輩のこと見つめ続けてたんだから…。知ってたんでしょ。それだけ見守ってたら、妖怪じゃなくなるわよね。」
希久美は泰佑を自分の胸の中で強く抱きしめた。
「居るのよ、先輩。私の様に何年も先輩を見続けて、それでもまだ見飽きないで見続けるような馬鹿な女が。」
「菊江、お前…。」
「私は死んじゃったけど…。必ずそんな女はいるの。そりゃぁ、私みたいないい女は少ないから、何度か失敗するかもしれない。でも恐れないで、時間をかけてそういう女を見つけるのよ。そして、今度は先輩がその人を見つめ続ける番よ。その人と作った家族を見つめ続けるの…。」
希久美の言葉を聞いただれもが、彼女の言葉に感動して流れる涙を止めようがなかった。ナミもテレサも、病室の外で声を押し殺し、抱き合って泣いていた。
「あのう、荒木先生」
抱き合って泣いているナミの肩を看護師が叩いた。
「えっ、なに?」
涙を拭きながら慌てて立ち上がるナミ。テレサは崩れた化粧を見られないように顔をそらした。
「あのう、急患なんですけど、PHS鳴ってませんでした?」
「ご、ごめんなさい。テレサあとは、菊江が静かに去るだけだから頼むわよ。できるだけ早く戻るから…」
泰佑の目尻から、大粒の涙が一筋流れた。
「そりゃそうだよな…。その子の存在自体を忘れてるんだから、その子がいくら呼んでも、見てもくれないし、来てくれるはずもない。」
そうよ、全部吐きだしなさい。息を荒くして語る泰佑だが、希久美はそれを押さえようとはしなかった。
「女なんてみんなそうだ。自分にやりたいことができれば、他のことは簡単に忘れる。自分の産んだ子さえ忘れるくらいなんだから、男のことを忘れるなんて朝飯前だ。しかも心に波風をまったくたてずにやってのける。そんな相手を同じ人間と思えるか?自分に言わせれば妖怪だよ。妖怪相手にセックスなんか出来るわけがない…。」
ここだ、ここが核心だ。泰佑の話を聞いている3人がみな、そう直感した。希久美が叫んだ。
「でも私とは出来たわ。」
泰佑が思わず希久美の顔を見上げる。
「そうよ、出来て当たり前だわ。だってあたし2年も先輩のこと見つめ続けてたんだから…。知ってたんでしょ。それだけ見守ってたら、妖怪じゃなくなるわよね。」
希久美は泰佑を自分の胸の中で強く抱きしめた。
「居るのよ、先輩。私の様に何年も先輩を見続けて、それでもまだ見飽きないで見続けるような馬鹿な女が。」
「菊江、お前…。」
「私は死んじゃったけど…。必ずそんな女はいるの。そりゃぁ、私みたいないい女は少ないから、何度か失敗するかもしれない。でも恐れないで、時間をかけてそういう女を見つけるのよ。そして、今度は先輩がその人を見つめ続ける番よ。その人と作った家族を見つめ続けるの…。」
希久美の言葉を聞いただれもが、彼女の言葉に感動して流れる涙を止めようがなかった。ナミもテレサも、病室の外で声を押し殺し、抱き合って泣いていた。
「あのう、荒木先生」
抱き合って泣いているナミの肩を看護師が叩いた。
「えっ、なに?」
涙を拭きながら慌てて立ち上がるナミ。テレサは崩れた化粧を見られないように顔をそらした。
「あのう、急患なんですけど、PHS鳴ってませんでした?」
「ご、ごめんなさい。テレサあとは、菊江が静かに去るだけだから頼むわよ。できるだけ早く戻るから…」



