ミチエはいきなり耳元で声を掛けられて驚きのあまり尻餅をついた。
「そんな驚かないでください。外から何度も声かけたのに、返事してくれないから…。」
恐る恐る見上げると、そこに泰滋が立っていた。
「泰滋さん…なんでそこに…。」
「やだな。今日お伺いすると言ったじゃないですか。」
「でも、まさかこんなに早くいらっしゃるとは…。」
「親戚の家にいても、やることがないんでね。それはともかく…そんなに長く地面に腰掛けていると冷えますよ。」
笑いながら泰滋はミチエに手を差し伸べた。水道の水で冷え切った彼女の手には、泰滋の手がとてつもなく暖かく感じられた。腰についた土を払ってくれる泰滋にどう対応したらいいかわからないミチエは、とりあえず彼にあがなうこともできず、小さくお礼を言うと、またしゃがみ込んでお米とぎを再開した。
「これから朝食ですか?」
「泰滋さんはまだなんですか?」
ミチエは顔も上げず答える。
「ええ、親戚の家を出たときは、まだ夜が明けてなかったですから…。」
「よかったら、ご一緒に朝食をいかがですか?」
「そりゃありがたい。」
ミチエが見上げると、そこには満面に笑みを浮かべる泰滋の顔があった。
「ミチエさん。これは…この不気味なもんはなんですか?」
朝食の食卓で、ミチエの家族と挨拶を済ませた泰滋は、食卓に並ぶ惣菜のひとつひとつを珍しそうに眺めていた。一方ミチエの家族は、突然現れて、屈託もなく他人の家の朝食を楽しむ泰滋にどう対応したらいいか分からず、唖然とした面持ちで彼を眺めている。
「それは、納豆ですよ。」
「こっ、これが…。」
泰滋は絶句して、納豆が盛られた小鉢を、顔を背けて遠ざける。
「関東では、腐った豆を食べるとは聞いてはおりましたが…、本当だったんですね。」
京都人の泰滋には、納豆の匂いが激しすぎるようだ。しかし、なんのことはない。10年先には、この納豆が彼の大好物になっているのだ。
「ミっ、ミチエさん。この味噌汁はなんですか?味噌の味がしません…それに白くないし…。」
「千葉じゃ、みんなこんな田舎味噌ですよ。甘い白味噌は、滅多に使いません。」
「そーなんですか…。」
泰滋は、朝食に難癖をつけているのではない。ひとつひとつの生活スタイルが京都とは異なり、珍しくて仕方がないのだ。嬉々とした顔で質問する泰滋に、ミチエは丁寧に答えた。
「そんな驚かないでください。外から何度も声かけたのに、返事してくれないから…。」
恐る恐る見上げると、そこに泰滋が立っていた。
「泰滋さん…なんでそこに…。」
「やだな。今日お伺いすると言ったじゃないですか。」
「でも、まさかこんなに早くいらっしゃるとは…。」
「親戚の家にいても、やることがないんでね。それはともかく…そんなに長く地面に腰掛けていると冷えますよ。」
笑いながら泰滋はミチエに手を差し伸べた。水道の水で冷え切った彼女の手には、泰滋の手がとてつもなく暖かく感じられた。腰についた土を払ってくれる泰滋にどう対応したらいいかわからないミチエは、とりあえず彼にあがなうこともできず、小さくお礼を言うと、またしゃがみ込んでお米とぎを再開した。
「これから朝食ですか?」
「泰滋さんはまだなんですか?」
ミチエは顔も上げず答える。
「ええ、親戚の家を出たときは、まだ夜が明けてなかったですから…。」
「よかったら、ご一緒に朝食をいかがですか?」
「そりゃありがたい。」
ミチエが見上げると、そこには満面に笑みを浮かべる泰滋の顔があった。
「ミチエさん。これは…この不気味なもんはなんですか?」
朝食の食卓で、ミチエの家族と挨拶を済ませた泰滋は、食卓に並ぶ惣菜のひとつひとつを珍しそうに眺めていた。一方ミチエの家族は、突然現れて、屈託もなく他人の家の朝食を楽しむ泰滋にどう対応したらいいか分からず、唖然とした面持ちで彼を眺めている。
「それは、納豆ですよ。」
「こっ、これが…。」
泰滋は絶句して、納豆が盛られた小鉢を、顔を背けて遠ざける。
「関東では、腐った豆を食べるとは聞いてはおりましたが…、本当だったんですね。」
京都人の泰滋には、納豆の匂いが激しすぎるようだ。しかし、なんのことはない。10年先には、この納豆が彼の大好物になっているのだ。
「ミっ、ミチエさん。この味噌汁はなんですか?味噌の味がしません…それに白くないし…。」
「千葉じゃ、みんなこんな田舎味噌ですよ。甘い白味噌は、滅多に使いません。」
「そーなんですか…。」
泰滋は、朝食に難癖をつけているのではない。ひとつひとつの生活スタイルが京都とは異なり、珍しくて仕方がないのだ。嬉々とした顔で質問する泰滋に、ミチエは丁寧に答えた。



