すき焼きの準備ができるのを待っていた汀怜奈は、手持ち無沙汰に佑樹の家の居間を眺め回す。ふと、棚に飾ってある家族写真に目が止まった。佑樹、そして佑樹の父親。ふたりの顔は知っているので、二人を囲むそれ以外の人々が家族なのだろう。写真に母親の姿はなかった。佑樹の兄。そして祖父。男だけの珍しい家族写真に見入っていると、奥の部屋から、人を呼ぶ声がした。
「あの…佑樹さん。」
汀怜奈は台所に向かって佑樹に声をかけたが、忙しく立ち働く彼の耳には届かないようだ。仕方なく、汀怜奈は声のする方向へ進んでいく。すると声は、離れの和室から聞こえる。汀怜奈は静かに障子を開けてみた。部屋の中央に布団が敷かれていて、老人が寝ていた。
「その足音は、佑樹ではないようだが…。」
「はい、佑樹さんは台所で忙しそうで…。」
「そうか…申し訳ない、どなたか知らないが、そのコップの水を飲ませてもらえませんか。無性に喉が渇いて…。」
「はい。」
汀怜奈は、枕元のコップに立っているストローを、老人の口に添えた。その老人は、さっき買い物の帰りに話を聞いた佑樹の祖父であろうと、汀怜奈も容易に察することができた。祖父は、三度喉を鳴らすと、頷いてもう十分だと汀怜奈に合図を送る。
「ありがとう…お嬢さん。」
汀怜奈のコップを持つ手が止まった。
「私が女性であることが、おじいさまにはお分かりになるのですね。」
「あたりまえだよ。そんな柔らかな足音をたてるのは、女性以外におらんだろう。それに…」
老人は、ちらっと汀怜奈を覗き見る。
「どんな格好をしたとしても、お嬢さんは女性らしさに溢れているよ。もし、女性だとわからないバカがいるとすれば、それはうちの息子か孫ぐらいなものだ。」
汀怜奈は、クスッと笑った口元を手で隠した。
「それに、その爪…あなたは、プロのギタリスタだね。」
汀怜奈は慌てて右手を背中に回してその爪を隠した。
「さっきの演奏はあなただったか…。」
「聞こえましたか?」
「ああ、美しい音色は聞こえたよ。聞きながら、懐かしい風景を想い出した。」
「そうでございますか…最近佑樹さんが手に入れたギターを弾かせていただきました。弦が新しければ、もっといい音が出ると思います。」
「いい音が出る…か。でも残念ながら、お嬢さんのギターから声は聞こえなかったね…。」
「あの…佑樹さん。」
汀怜奈は台所に向かって佑樹に声をかけたが、忙しく立ち働く彼の耳には届かないようだ。仕方なく、汀怜奈は声のする方向へ進んでいく。すると声は、離れの和室から聞こえる。汀怜奈は静かに障子を開けてみた。部屋の中央に布団が敷かれていて、老人が寝ていた。
「その足音は、佑樹ではないようだが…。」
「はい、佑樹さんは台所で忙しそうで…。」
「そうか…申し訳ない、どなたか知らないが、そのコップの水を飲ませてもらえませんか。無性に喉が渇いて…。」
「はい。」
汀怜奈は、枕元のコップに立っているストローを、老人の口に添えた。その老人は、さっき買い物の帰りに話を聞いた佑樹の祖父であろうと、汀怜奈も容易に察することができた。祖父は、三度喉を鳴らすと、頷いてもう十分だと汀怜奈に合図を送る。
「ありがとう…お嬢さん。」
汀怜奈のコップを持つ手が止まった。
「私が女性であることが、おじいさまにはお分かりになるのですね。」
「あたりまえだよ。そんな柔らかな足音をたてるのは、女性以外におらんだろう。それに…」
老人は、ちらっと汀怜奈を覗き見る。
「どんな格好をしたとしても、お嬢さんは女性らしさに溢れているよ。もし、女性だとわからないバカがいるとすれば、それはうちの息子か孫ぐらいなものだ。」
汀怜奈は、クスッと笑った口元を手で隠した。
「それに、その爪…あなたは、プロのギタリスタだね。」
汀怜奈は慌てて右手を背中に回してその爪を隠した。
「さっきの演奏はあなただったか…。」
「聞こえましたか?」
「ああ、美しい音色は聞こえたよ。聞きながら、懐かしい風景を想い出した。」
「そうでございますか…最近佑樹さんが手に入れたギターを弾かせていただきました。弦が新しければ、もっといい音が出ると思います。」
「いい音が出る…か。でも残念ながら、お嬢さんのギターから声は聞こえなかったね…。」



