汀怜奈の思考が、野菜からそれを担ぐ佑樹へと無意識に移行していく。考えてみれば、八百屋で、男性…いや男の子と一緒に買い物するなんて初めての経験だ。こと買い物に関しては、自分はまるで役に立っていなかったが、佑樹に皮肉を言われながらも、買い物カゴをぶら下げて、売り場をぶらぶら歩くのはなんとなく心が休まる。
「それにしても、佑樹さんはいろんなことをよくご存知ですね。」
「ああ、母親が小さい時に家を出てしまったので…。その頃はまだ親父もサラリーマンで、家のこととか孫の世話とかは、全部同居していたじいちゃんがやってたんです。小さい頃は、自分もじいちゃんにべったりくっついてましたから、いろんなこと教えてもらいました。」
「そうなのですか…。」
汀怜奈は自分の記憶を手繰ってみた。自分には、どうも祖父という存在の記憶がない。今度母に聞いてみよう。
「そのじいちゃんが、半年前末期の大腸がんだとわかって…。そしてら、オヤジのやつ、結構大きな会社に勤めてたんですが…急にやめちゃって、前からなりたかった恋愛小説家になるんだって、いきなり執筆活動を始めちゃうんですよ。」
汀怜奈の脳裏に、白いタオルのハチマキをした短パン姿の父親が浮かんできた。
「結局恋愛小説じゃ食えないから、変な雑誌に掲載するエロ小説を書いて小銭にしてますけど…。」
「おじいさまはどちらに?」
「家族の手も足りないから満足なケアができっこないのに、どうしても在宅看護するんだって、無理やり家に連れてきちゃって…。奥の和室で寝ています。入院費ももったいないと思ったんじゃないですか、けちなオヤジのことだから…。」
佑樹が小さくため息をついた。
「こんな時に急に会社辞めるとか、じいちゃんを無理やり連れ戻すとか…全くうちのオヤジは意味不明ですよね。」
「そうでしょうか…。」
汀怜奈が、佑樹の前に回って彼の歩みを止めた。
「わたしには、おとうさまの気持ちがなんとなくわかるんですが…。」
「何がわかるんです?」
「おとうさまはおじいさまと残された時間を、少しでも長く一緒にいたいから…自分の生活をお変えになったんじゃないですか。」
確かに表現の方法が不器用で、外からは意味不明に思われるかもしれないが、汀怜奈は佑樹の父の突飛な行動には家族愛が隠れていると感じていた。
「それにしても、佑樹さんはいろんなことをよくご存知ですね。」
「ああ、母親が小さい時に家を出てしまったので…。その頃はまだ親父もサラリーマンで、家のこととか孫の世話とかは、全部同居していたじいちゃんがやってたんです。小さい頃は、自分もじいちゃんにべったりくっついてましたから、いろんなこと教えてもらいました。」
「そうなのですか…。」
汀怜奈は自分の記憶を手繰ってみた。自分には、どうも祖父という存在の記憶がない。今度母に聞いてみよう。
「そのじいちゃんが、半年前末期の大腸がんだとわかって…。そしてら、オヤジのやつ、結構大きな会社に勤めてたんですが…急にやめちゃって、前からなりたかった恋愛小説家になるんだって、いきなり執筆活動を始めちゃうんですよ。」
汀怜奈の脳裏に、白いタオルのハチマキをした短パン姿の父親が浮かんできた。
「結局恋愛小説じゃ食えないから、変な雑誌に掲載するエロ小説を書いて小銭にしてますけど…。」
「おじいさまはどちらに?」
「家族の手も足りないから満足なケアができっこないのに、どうしても在宅看護するんだって、無理やり家に連れてきちゃって…。奥の和室で寝ています。入院費ももったいないと思ったんじゃないですか、けちなオヤジのことだから…。」
佑樹が小さくため息をついた。
「こんな時に急に会社辞めるとか、じいちゃんを無理やり連れ戻すとか…全くうちのオヤジは意味不明ですよね。」
「そうでしょうか…。」
汀怜奈が、佑樹の前に回って彼の歩みを止めた。
「わたしには、おとうさまの気持ちがなんとなくわかるんですが…。」
「何がわかるんです?」
「おとうさまはおじいさまと残された時間を、少しでも長く一緒にいたいから…自分の生活をお変えになったんじゃないですか。」
確かに表現の方法が不器用で、外からは意味不明に思われるかもしれないが、汀怜奈は佑樹の父の突飛な行動には家族愛が隠れていると感じていた。



