「先輩って…、野球部の先輩じゃないでしょ。こんな綺麗な人が野球をやるとは思えないし…。」
詮索好きなおばちゃんの視線に耐えかねて汀怜奈は店の奥へ逃げ込んだ。
さて、汀怜奈は山積みされた様々な野菜を前にして、動きが止まる。首をひねりながら考え込んでしまった。
『すき焼きに入れる野菜って、なんでしたかしら…。』
海外生活も長く、家の食事も家政婦さんが作ってくれる洋食がほとんど。すき焼きなんて、音楽関係者と外で数回食べる程度で、具の野菜なんてあまり意識したことがない。だから、野菜の山を目の前にして、何を取ったらいいのか判断しかねていた。とりあえずもやしをひと袋持って、これは必要かどうか記憶をタグってみた。
「どうしました、先輩。なんか、もやしとモメごとですか?」
「いえ…。」
どうも汀怜奈は、場違いなものを取り上げてしまったようだ。
「解決したらひとまずもやしを置いて、あっちの棚から、シイタケをひと袋持ってきてください。自分は長ネギ選んでますから…。」
もともとプライドの高い汀怜奈は、人に指図されることが嫌いだ。しかし、とりあえずここは佑樹の指示通りに動いた方が無難だと切り替え、口をへの字にしながらも、おとなしくシイタケを取りに行った。
「ちょっと待ってくださいよ、先輩。これはシイタケじゃなくて、マッシュルーム。さすがにこれはすき焼きには入れないでしょう。」
汀怜奈が持ってきた袋を見た佑樹が笑い出す。また汀怜奈はしくじったようだ。
「えっ、シイタケとマッシュルームは、全く別なものなのですか?」
「いえ、まあ同じキノコ類ですけど…。」
「では、なぜすき焼きに入れてはいけないのです。」
度重なる失敗に、ちょっと傷ついた汀怜奈は、今度はムキになって言い張る。理不尽な主張ではあるが、頬を丸くふくらませて言い張る汀怜奈の顔を見ると、佑樹もなぜか心がゆるんで、その主張を尊重してあげたくなってしまった。
「…ですよね。今夜はマッシュルームでいきましょう。」
汀怜奈は満足そうにマッシュルームの袋をかごに入れた。
「ところで、なにをなさってるの?」
盛んに長ネギを指でハジいている佑樹を不思議に思って汀怜奈が聞いた。
「あぁ、これ…じいちゃんに教えてもらったんですよ。いい野菜は声でわかるってね。」
「お野菜が、しゃべるのですか?」
詮索好きなおばちゃんの視線に耐えかねて汀怜奈は店の奥へ逃げ込んだ。
さて、汀怜奈は山積みされた様々な野菜を前にして、動きが止まる。首をひねりながら考え込んでしまった。
『すき焼きに入れる野菜って、なんでしたかしら…。』
海外生活も長く、家の食事も家政婦さんが作ってくれる洋食がほとんど。すき焼きなんて、音楽関係者と外で数回食べる程度で、具の野菜なんてあまり意識したことがない。だから、野菜の山を目の前にして、何を取ったらいいのか判断しかねていた。とりあえずもやしをひと袋持って、これは必要かどうか記憶をタグってみた。
「どうしました、先輩。なんか、もやしとモメごとですか?」
「いえ…。」
どうも汀怜奈は、場違いなものを取り上げてしまったようだ。
「解決したらひとまずもやしを置いて、あっちの棚から、シイタケをひと袋持ってきてください。自分は長ネギ選んでますから…。」
もともとプライドの高い汀怜奈は、人に指図されることが嫌いだ。しかし、とりあえずここは佑樹の指示通りに動いた方が無難だと切り替え、口をへの字にしながらも、おとなしくシイタケを取りに行った。
「ちょっと待ってくださいよ、先輩。これはシイタケじゃなくて、マッシュルーム。さすがにこれはすき焼きには入れないでしょう。」
汀怜奈が持ってきた袋を見た佑樹が笑い出す。また汀怜奈はしくじったようだ。
「えっ、シイタケとマッシュルームは、全く別なものなのですか?」
「いえ、まあ同じキノコ類ですけど…。」
「では、なぜすき焼きに入れてはいけないのです。」
度重なる失敗に、ちょっと傷ついた汀怜奈は、今度はムキになって言い張る。理不尽な主張ではあるが、頬を丸くふくらませて言い張る汀怜奈の顔を見ると、佑樹もなぜか心がゆるんで、その主張を尊重してあげたくなってしまった。
「…ですよね。今夜はマッシュルームでいきましょう。」
汀怜奈は満足そうにマッシュルームの袋をかごに入れた。
「ところで、なにをなさってるの?」
盛んに長ネギを指でハジいている佑樹を不思議に思って汀怜奈が聞いた。
「あぁ、これ…じいちゃんに教えてもらったんですよ。いい野菜は声でわかるってね。」
「お野菜が、しゃべるのですか?」



