模索があらぬ方向に行き始めた汀怜奈は、首を振って慌てて考えを立て直す。『ヴォイス』の正体を見極めるためには、橋本ギターがどうしても必要だ。巷からは美女の天才ギタリスタと言われている自分だが、あのギターを手にするまでは、女を捨てても悔いはなかった。
バスルームを出ると、リビングングルームで母親が心配顔で待っていた。
「汀怜奈。いったい何があったか説明して頂戴。」
「お母様。先程タクシーに料金を払って頂きましたよね。」
「えっ…、確かに払いましたけど…。」
「領収書をいただけますか、また外に出なければならない用事がございまして。」
母親にどんなに問いただされても、汀怜奈はそれ以上喋ることなく、口元は決意の一文字で、固く閉じられた。
汀怜奈は、佑樹の家の玄関を覗き込んでいた。
今朝は動転していて乗った場所が定かではなかったのだが、領収書から自分を乗せたタクシーの運転手を割り出し、何処から乗ったのかを確認した。そこへやってくると、かすかな記憶をたどりながら佑樹の家を特定したのだった。
「あれ、佑樹の先輩じゃないですか。」
スーパーの袋を手にした男が、そんな汀怜奈に気づいて声を掛けてきた。
「えっ?」
またもや不審な初老の男に声をかけられて身構える汀怜奈。
「そんなに驚かないでくださいよ…。まだ自己紹介してなかったですよね。自分は佑樹の父です。」
「ああ…佑樹さんのお父様。ゆうべはご迷惑をお掛けいたしまして…。」
ここが佑樹の家で間違いが無いようだ。
「突然出ていっちゃうもんだから、佑樹が心配してましたよ。シャワーぐらい浴びていけばよかったのに…。替えの下着なら兄貴の使っていないのがあったんですよ。」
シャワー?男物の下着?とんでもない。しかし、この父親も佑樹同様自分を女だとは思っていないようだった。なんて鈍感な親子なのだろう。
「あの…佑樹さんは御在宅ですか?」
「御在宅ってほどのタマじゃないですけど…残念ながらご不在です。友達と会うとか言って近くのコンビニに行ってますが、すぐ戻ってきますよ。どうぞ勝手に上がって、佑樹の部屋で待っててください。」
バスルームを出ると、リビングングルームで母親が心配顔で待っていた。
「汀怜奈。いったい何があったか説明して頂戴。」
「お母様。先程タクシーに料金を払って頂きましたよね。」
「えっ…、確かに払いましたけど…。」
「領収書をいただけますか、また外に出なければならない用事がございまして。」
母親にどんなに問いただされても、汀怜奈はそれ以上喋ることなく、口元は決意の一文字で、固く閉じられた。
汀怜奈は、佑樹の家の玄関を覗き込んでいた。
今朝は動転していて乗った場所が定かではなかったのだが、領収書から自分を乗せたタクシーの運転手を割り出し、何処から乗ったのかを確認した。そこへやってくると、かすかな記憶をたどりながら佑樹の家を特定したのだった。
「あれ、佑樹の先輩じゃないですか。」
スーパーの袋を手にした男が、そんな汀怜奈に気づいて声を掛けてきた。
「えっ?」
またもや不審な初老の男に声をかけられて身構える汀怜奈。
「そんなに驚かないでくださいよ…。まだ自己紹介してなかったですよね。自分は佑樹の父です。」
「ああ…佑樹さんのお父様。ゆうべはご迷惑をお掛けいたしまして…。」
ここが佑樹の家で間違いが無いようだ。
「突然出ていっちゃうもんだから、佑樹が心配してましたよ。シャワーぐらい浴びていけばよかったのに…。替えの下着なら兄貴の使っていないのがあったんですよ。」
シャワー?男物の下着?とんでもない。しかし、この父親も佑樹同様自分を女だとは思っていないようだった。なんて鈍感な親子なのだろう。
「あの…佑樹さんは御在宅ですか?」
「御在宅ってほどのタマじゃないですけど…残念ながらご不在です。友達と会うとか言って近くのコンビニに行ってますが、すぐ戻ってきますよ。どうぞ勝手に上がって、佑樹の部屋で待っててください。」



