『表甲が厚目の松単板、特徴的な力木が3本、膠付け。裏板が楓の単板で側板は楓合板、裏板接着は合成接着剤。ごついブリッジがとにかく荒削りで無骨。棹は楓、ペグは32mmの安物。ローゼット、パーフリング、バインデイング(サウンドホールの淵の模様)類はプラスチック。ペグヘッドデザインがまったく野暮臭い。このギター、特に優れているものは無いんですが…。』
『ですが?』
『抱いてみると…なぜかしっくりくるんですよね…。それに力木を直せば、きっと良い音が鳴りますよ。まあ、お客さんが決めることですが…』
それがスタッフのセールストークなのか、本心なのか、判別はつかない。仮に修理を頼んだとしても、修理代をどこから工面したらいいのか。最近友達から紹介してもらった渋谷のホテルの雑用係のバイトがあるにはあったが、僅かなバイト代だから、1ヶ月は働かないと修理代にはならない。長い時間かけて悩んだ末、結局佑樹は1ヶ月後に受け取ることでそのギターをスタッフに委ねた。
今日はその引き取りの日だった。ギターケースを持たない佑樹は、修理工房へ持って行った時と同様、ギターを布団収納用の透明な大きなビニール袋で包んでいた。ビニールから透けて見えるギターを覗き込んで、代金を払って受け取る際に、スタッフから言われた言葉を思い出す。
『このギター、修理してわかったことなんですが…。』
スタッフが首を傾げながらつぶやく。
『えっ、まだ修理が必要な場所があったなんて言わないでくださいよ。』
『いえ…力木を直す際に、トップ坂の裏を鏡で覗いたら、札のようなものが貼ってあるのが分かりました。』
『札って…なんですかそれ?』
『なんか字が書いてあって…』
『えーっ、文字って…なんて書いてあるんですか?』
『判読できないんです。だいぶ年代もんですからね…。』
『まさか、その文字は護符代わりで、実はこの楽器は呪われているとか?』
『耳なし芳一じゃあるまいし…。』
スタッフの例えに、自分の耳もなくなるのかと絶句する佑樹。
『とにかく、ギターの中なんで無理やりはがすわけにもいかず、音にも影響ありませんから、そのままにしてあります。』
ギターの中に文字が書かれた札が貼ってあるのか…。古いギターだけに薄気味悪いと言えば薄気味悪い。佑樹はビニール越しにギターのサウンドホールを覗こうとギターを持ちあげた。
『ですが?』
『抱いてみると…なぜかしっくりくるんですよね…。それに力木を直せば、きっと良い音が鳴りますよ。まあ、お客さんが決めることですが…』
それがスタッフのセールストークなのか、本心なのか、判別はつかない。仮に修理を頼んだとしても、修理代をどこから工面したらいいのか。最近友達から紹介してもらった渋谷のホテルの雑用係のバイトがあるにはあったが、僅かなバイト代だから、1ヶ月は働かないと修理代にはならない。長い時間かけて悩んだ末、結局佑樹は1ヶ月後に受け取ることでそのギターをスタッフに委ねた。
今日はその引き取りの日だった。ギターケースを持たない佑樹は、修理工房へ持って行った時と同様、ギターを布団収納用の透明な大きなビニール袋で包んでいた。ビニールから透けて見えるギターを覗き込んで、代金を払って受け取る際に、スタッフから言われた言葉を思い出す。
『このギター、修理してわかったことなんですが…。』
スタッフが首を傾げながらつぶやく。
『えっ、まだ修理が必要な場所があったなんて言わないでくださいよ。』
『いえ…力木を直す際に、トップ坂の裏を鏡で覗いたら、札のようなものが貼ってあるのが分かりました。』
『札って…なんですかそれ?』
『なんか字が書いてあって…』
『えーっ、文字って…なんて書いてあるんですか?』
『判読できないんです。だいぶ年代もんですからね…。』
『まさか、その文字は護符代わりで、実はこの楽器は呪われているとか?』
『耳なし芳一じゃあるまいし…。』
スタッフの例えに、自分の耳もなくなるのかと絶句する佑樹。
『とにかく、ギターの中なんで無理やりはがすわけにもいかず、音にも影響ありませんから、そのままにしてあります。』
ギターの中に文字が書かれた札が貼ってあるのか…。古いギターだけに薄気味悪いと言えば薄気味悪い。佑樹はビニール越しにギターのサウンドホールを覗こうとギターを持ちあげた。



