「あの、こちらに修学旅行で千葉女子高生のみなさんがお泊りですやろか。」
「へえ、そうどすけど…。」
泰滋は、阿闍梨餅の包みを差し出した。
「クラスはわからへんやけど、生徒の宇津木ミチエさんに届けて欲しいものがあるんや…。」
「ちょっとまっておくれやっしゃ。」
泰滋の言葉を最後まで聞けない慌てものの玄関番だった。
「いえ、ただ渡していただければそれでええんやけど…。」
慌てて玄関番の背に声かけたが、時は既に遅し、彼は旅館の奥に引っ込むと、なにやら怖そうな眼鏡のおばさんを連れてきた。
「千葉女子高の担任教師だけど、あなた、何の御用なの?」
早口の標準語。ただでさえきつく感じる口調に加え、鋭い眼光で泰滋に詰問する。とんでもないものを玄関番は引き連れてきたと、泰滋は今更ながら来てしまったことを後悔した。ここで逃げるわけにも行かず、泰滋もぎこちないが標準語に切り替えて対応せざるを得なかった。
「宇津木ミチエさんに頂いたお土産の、お礼をお渡ししたいと…。」
「君は誰?宇津木とどういうご関係?」
「自分は同志社の大学生で…、宇津木さんとは文通をさせていただいており…。」
「お土産のお礼って、宇津木はいつあなたにお土産を渡したの?」
「えっ、それは…昨日頂きまして…。」
「昨日?そんな個人的な時間は与えてないわよ。」
「そ、そんな…。」
関東の女はこうもきついものなのか。泰滋はしどろもどろになって言葉を失ってしまった。硬直している泰滋の頭のてっぺんからつま先まで、しばらく眺めていた担任教師だが、やがて値踏みが終わったのか口を開く。
「たしか…宇津木も文通運動に参加しているって言ってたわよね。それで、昨日会ったの?」
「他の文通運動仲間とともにお会いする予定でしたが、自分は行けませんでした。」
「市内の自由見学の時間中かしら…。それで、君はどうしたいんだって?」
「宇津木さんにお土産を頂いておきながら不義理と思われるのも心外でして…このお礼をお渡しいただければと…。」
「君、名前は?」
「自分は石津泰滋といいます。」
「わかった。預かるわ。」
「おおきに。それでは、失礼いたします。」
泰滋は、逃げるように旅館の外へ飛び出していった。
「へえ、そうどすけど…。」
泰滋は、阿闍梨餅の包みを差し出した。
「クラスはわからへんやけど、生徒の宇津木ミチエさんに届けて欲しいものがあるんや…。」
「ちょっとまっておくれやっしゃ。」
泰滋の言葉を最後まで聞けない慌てものの玄関番だった。
「いえ、ただ渡していただければそれでええんやけど…。」
慌てて玄関番の背に声かけたが、時は既に遅し、彼は旅館の奥に引っ込むと、なにやら怖そうな眼鏡のおばさんを連れてきた。
「千葉女子高の担任教師だけど、あなた、何の御用なの?」
早口の標準語。ただでさえきつく感じる口調に加え、鋭い眼光で泰滋に詰問する。とんでもないものを玄関番は引き連れてきたと、泰滋は今更ながら来てしまったことを後悔した。ここで逃げるわけにも行かず、泰滋もぎこちないが標準語に切り替えて対応せざるを得なかった。
「宇津木ミチエさんに頂いたお土産の、お礼をお渡ししたいと…。」
「君は誰?宇津木とどういうご関係?」
「自分は同志社の大学生で…、宇津木さんとは文通をさせていただいており…。」
「お土産のお礼って、宇津木はいつあなたにお土産を渡したの?」
「えっ、それは…昨日頂きまして…。」
「昨日?そんな個人的な時間は与えてないわよ。」
「そ、そんな…。」
関東の女はこうもきついものなのか。泰滋はしどろもどろになって言葉を失ってしまった。硬直している泰滋の頭のてっぺんからつま先まで、しばらく眺めていた担任教師だが、やがて値踏みが終わったのか口を開く。
「たしか…宇津木も文通運動に参加しているって言ってたわよね。それで、昨日会ったの?」
「他の文通運動仲間とともにお会いする予定でしたが、自分は行けませんでした。」
「市内の自由見学の時間中かしら…。それで、君はどうしたいんだって?」
「宇津木さんにお土産を頂いておきながら不義理と思われるのも心外でして…このお礼をお渡しいただければと…。」
「君、名前は?」
「自分は石津泰滋といいます。」
「わかった。預かるわ。」
「おおきに。それでは、失礼いたします。」
泰滋は、逃げるように旅館の外へ飛び出していった。



