「ええ、そうでしたわ。」
「でも、本当にそうでしょうか?」
「えっ、どういうことですの。」
「あっと、目を開けちゃダメです。次に思い出してもらいたいのは…。」
汀怜奈は開きかけたまぶたをまた閉じて佑樹の言葉に集中する。
「おじいちゃんの昔話です。」
そう、おじいさまが病床で最期の力を振り絞ってお話いただいた昔のお話し。汀怜奈は、時折息を継ぎながら、苦しくも楽しそうにお話しをされるおじいさまの顔を思い出した。
「あのときじいちゃんは、『凪の海のようなギター』が素晴らしいギターなのだと言ってましたよね。」
「ええ、そうしたら、ならば音の出ないギターのことなのって…おかしいですわね。」
話しながら汀怜奈の顔に笑が溢れる。
「自分もグラナダでギター作りを学びながら、ずっとそのことを考えていました。いったい、『凪の海』のようなギターってどういうことなのか…。」
「お分かりになったんですか?」
「いえ、未だに正解は得ていないんですが…ただ、『凪の海』ってどんなだろうって想像してみたんです。先輩も想像してみてください…。」
汀怜奈は、目をつぶったまま、上を向いた。
「静かで、穏やかで…きっと音といえば、かもめの鳴く音、船の切っ先が風を切る音だけ。海自体は何の音も立てることはない。そんな雄大で優しくそして寛容な海を目の前にしたら、人間ってどうするでしょうか。」
汀怜奈の手を握る佑樹の手に力が入った。
「きっと自分だったら、口に出せずに心の奥底にしまっていた想いや、願いや、悲しみを、海に向かって語りはじめると思うんです。」
汀怜奈はインスピレーションを得たように目を見開いた。
「『凪の海』のようなギターとは、その雄大で優しく、そして寛容な音で、聴く人の魂の声を引き出すものだと…。」
「もちろん、ギター自体にそんな力などあるはずもありません。先輩がじいちゃんに弾いてくれたあの演奏。あれはすばらしい演奏でした。自分が弾いたときは何の声も聞こえませんでしたが、先輩が引いてくれたときは確かに、じいちゃんとばあちゃんの話す声が聞こえました。」
「わたしもです。」
「今までギターとギターを演奏するものが、語り、声を出すのだと思っていました。そうではなくて、聴く者たちが、そのギターの音色と演奏を聞いて、自分たちの本当の心を見いだし、そして語り始める。」
「でも、本当にそうでしょうか?」
「えっ、どういうことですの。」
「あっと、目を開けちゃダメです。次に思い出してもらいたいのは…。」
汀怜奈は開きかけたまぶたをまた閉じて佑樹の言葉に集中する。
「おじいちゃんの昔話です。」
そう、おじいさまが病床で最期の力を振り絞ってお話いただいた昔のお話し。汀怜奈は、時折息を継ぎながら、苦しくも楽しそうにお話しをされるおじいさまの顔を思い出した。
「あのときじいちゃんは、『凪の海のようなギター』が素晴らしいギターなのだと言ってましたよね。」
「ええ、そうしたら、ならば音の出ないギターのことなのって…おかしいですわね。」
話しながら汀怜奈の顔に笑が溢れる。
「自分もグラナダでギター作りを学びながら、ずっとそのことを考えていました。いったい、『凪の海』のようなギターってどういうことなのか…。」
「お分かりになったんですか?」
「いえ、未だに正解は得ていないんですが…ただ、『凪の海』ってどんなだろうって想像してみたんです。先輩も想像してみてください…。」
汀怜奈は、目をつぶったまま、上を向いた。
「静かで、穏やかで…きっと音といえば、かもめの鳴く音、船の切っ先が風を切る音だけ。海自体は何の音も立てることはない。そんな雄大で優しくそして寛容な海を目の前にしたら、人間ってどうするでしょうか。」
汀怜奈の手を握る佑樹の手に力が入った。
「きっと自分だったら、口に出せずに心の奥底にしまっていた想いや、願いや、悲しみを、海に向かって語りはじめると思うんです。」
汀怜奈はインスピレーションを得たように目を見開いた。
「『凪の海』のようなギターとは、その雄大で優しく、そして寛容な音で、聴く人の魂の声を引き出すものだと…。」
「もちろん、ギター自体にそんな力などあるはずもありません。先輩がじいちゃんに弾いてくれたあの演奏。あれはすばらしい演奏でした。自分が弾いたときは何の声も聞こえませんでしたが、先輩が引いてくれたときは確かに、じいちゃんとばあちゃんの話す声が聞こえました。」
「わたしもです。」
「今までギターとギターを演奏するものが、語り、声を出すのだと思っていました。そうではなくて、聴く者たちが、そのギターの音色と演奏を聞いて、自分たちの本当の心を見いだし、そして語り始める。」



