「自分は先輩が男だと思ってましたから…ただ先輩が好きでつきまとっていただけです。だのに、先輩には自分がつきまとうのを許す別な理由があったんですね。」
汀怜奈は二の句が継げなかった。
「セルリアンタワー東急ホテルでお会いした時も、御茶ノ水でお茶した時も、結局気づかぬ自分をからかっていたんですね。」
「そんなことは…。」
「で…答えを見つけたんですか?」
佑樹は汀怜奈が言い訳をする暇を与えなかった。
「…結局は、わかりませんでした。」
「そうですか、残念でしたね。」
佑樹の言葉ぶりが知らずと無表情になってくる。
「で、おじいちゃんも逝っちゃって、もううちに来る必要はない。だからそのカッコでカミングアウト。はい、これでお終いってことですね。」
「そんな…。」
「分かりましたよ、村瀬汀怜奈さん。どうもご苦労様でした。残念ながら目的は達成できなかったみたいですが、別れの餞別にあのギターをお送りますよ。おじいちゃんも逝っちゃって、もう自分には必要ありませんから。」
「私の嘘を許してとは言えませんが…ギターは続けてください。おじいさまの想いと、そして彼女への告白もまだ残っているのでしょう。」
「もういい加減…先輩の振りをするのはやめてくれませんか村瀬さん。自分の好きな先輩はあなたじゃない。」
佑樹は、サヨナラも言わず背を向けた。歩み去る佑樹の背中に呼びかける汀怜奈。しかしその声にも佑樹が振り返らないのは、頬に伝わる涙を見られたくないからだ。もう汀怜奈も追うことはなかった。
佑樹は歩きながら、なんて自分は幼いのだろうと切実に感じていた。正直に話してくれた汀怜奈を受け入れられないのは、なぜであるか自分にはわかっていた。そばにいてくれた先輩を失うことの喪失感が、彼をことのほか苦しめた。村瀬汀怜奈であることを明かした彼女は、もう先輩として佑樹のそばには居られないはるか天井の人なのである。
『どうって…強くて頼りがいもあるんですが、プライドが高くて、おこりんぼで、時々手に負えない時があります。…いえ、それでいて放っておけないような、どんなことをしても、支えてあげなきゃいけないって思えるような…。』
汀怜奈は二の句が継げなかった。
「セルリアンタワー東急ホテルでお会いした時も、御茶ノ水でお茶した時も、結局気づかぬ自分をからかっていたんですね。」
「そんなことは…。」
「で…答えを見つけたんですか?」
佑樹は汀怜奈が言い訳をする暇を与えなかった。
「…結局は、わかりませんでした。」
「そうですか、残念でしたね。」
佑樹の言葉ぶりが知らずと無表情になってくる。
「で、おじいちゃんも逝っちゃって、もううちに来る必要はない。だからそのカッコでカミングアウト。はい、これでお終いってことですね。」
「そんな…。」
「分かりましたよ、村瀬汀怜奈さん。どうもご苦労様でした。残念ながら目的は達成できなかったみたいですが、別れの餞別にあのギターをお送りますよ。おじいちゃんも逝っちゃって、もう自分には必要ありませんから。」
「私の嘘を許してとは言えませんが…ギターは続けてください。おじいさまの想いと、そして彼女への告白もまだ残っているのでしょう。」
「もういい加減…先輩の振りをするのはやめてくれませんか村瀬さん。自分の好きな先輩はあなたじゃない。」
佑樹は、サヨナラも言わず背を向けた。歩み去る佑樹の背中に呼びかける汀怜奈。しかしその声にも佑樹が振り返らないのは、頬に伝わる涙を見られたくないからだ。もう汀怜奈も追うことはなかった。
佑樹は歩きながら、なんて自分は幼いのだろうと切実に感じていた。正直に話してくれた汀怜奈を受け入れられないのは、なぜであるか自分にはわかっていた。そばにいてくれた先輩を失うことの喪失感が、彼をことのほか苦しめた。村瀬汀怜奈であることを明かした彼女は、もう先輩として佑樹のそばには居られないはるか天井の人なのである。
『どうって…強くて頼りがいもあるんですが、プライドが高くて、おこりんぼで、時々手に負えない時があります。…いえ、それでいて放っておけないような、どんなことをしても、支えてあげなきゃいけないって思えるような…。』



