泰滋があぐらの中に腰掛けているヤスエの口にご飯を運びながら、笑顔で答えた。
「ここに来た時より、だいぶ明るくなったわよ。」
「きっと、養生ができて体も回復してきたのだろう。」
「そうかしら…。」
「これもママのおかげだよ。ありがとう。」
泰滋はミチエに向き直り、真顔で頭を下げた。
「やあねぇ、あらたまっちゃって…。やめてください。」
「なに照れてるんだよ。ところで、そろそろ、京都へ帰ることを考えたほうがいいかな?」
「いえ、まだ早いわよ。ゆっくり養生して半年後ぐらいでいいんじゃない。」
「そんな先おくりしたら、ママも大変だろう。」
「市場の仕事は、慣れてきたこともあるし、そんなに大変じゃないんだけど…。」
箸をくわえて口ごもるミチエ。
「けどって…なんだよママ。何か心配事でもあるのか。」
「心配事って程のもんでもないわ…。」
「なんだよ…言ってくれよ。」
ミチエは黙ったまま、優しい視線をヤスエに注いでいた。泰滋もその視線に気づくと、ヤスエの口へ運ぶ箸を止めて、ミチエに問いかける。
「なんだよ、ヤスエのことか?」
「ええ。」
「ヤスエに何か問題でも?」
「いえ別に…。」
そのまま、しばらく口を開かぬミチエに、さすがの泰滋も焦れてきていた。
「だから、なんだよ。」
「…今、パパのあぐら椅子の中でヤスエが楽しそうにご飯食べてるじゃない。」
「ああ。」
「ヤスエは、その特等席を半分でもいいから、快く開けてくれるのかなって…。」
「何言ってんだよ。このヤスエの特等席を、誰に開けるって言うん…」
泰滋は、ハッとして大きな目でミチエの笑の含んだ顔を見つめた。
「ママ…もしかして…。」
笑顔を崩さず、ただ頷くミチエ。泰滋は、ヤスエを抱き上げて叫んだ。
「ヤスエ、お前ももうすぐでお姉ちゃんになるぞー。」
ヤスエはわけがわからずも、突然の高い高いが嬉しくて、泰滋同様ハイテンションではしゃいでいた。
「…今度は男の子だといいわね。」
「そんなことはどうでもいい。元気な赤ちゃんが生まれて、ママが無事に出産を終えてくれれば…それで十分だよ。」
高い高いをやめようとせず喜び続ける泰滋とヤスエ。ミチエはそんなふたりをいつまでも笑顔で眺めていた。
「師匠!」
橋本が突然の呼びかけに驚いて振り向くと、肩で息をしている泰滋が立っていた。
「ここに来た時より、だいぶ明るくなったわよ。」
「きっと、養生ができて体も回復してきたのだろう。」
「そうかしら…。」
「これもママのおかげだよ。ありがとう。」
泰滋はミチエに向き直り、真顔で頭を下げた。
「やあねぇ、あらたまっちゃって…。やめてください。」
「なに照れてるんだよ。ところで、そろそろ、京都へ帰ることを考えたほうがいいかな?」
「いえ、まだ早いわよ。ゆっくり養生して半年後ぐらいでいいんじゃない。」
「そんな先おくりしたら、ママも大変だろう。」
「市場の仕事は、慣れてきたこともあるし、そんなに大変じゃないんだけど…。」
箸をくわえて口ごもるミチエ。
「けどって…なんだよママ。何か心配事でもあるのか。」
「心配事って程のもんでもないわ…。」
「なんだよ…言ってくれよ。」
ミチエは黙ったまま、優しい視線をヤスエに注いでいた。泰滋もその視線に気づくと、ヤスエの口へ運ぶ箸を止めて、ミチエに問いかける。
「なんだよ、ヤスエのことか?」
「ええ。」
「ヤスエに何か問題でも?」
「いえ別に…。」
そのまま、しばらく口を開かぬミチエに、さすがの泰滋も焦れてきていた。
「だから、なんだよ。」
「…今、パパのあぐら椅子の中でヤスエが楽しそうにご飯食べてるじゃない。」
「ああ。」
「ヤスエは、その特等席を半分でもいいから、快く開けてくれるのかなって…。」
「何言ってんだよ。このヤスエの特等席を、誰に開けるって言うん…」
泰滋は、ハッとして大きな目でミチエの笑の含んだ顔を見つめた。
「ママ…もしかして…。」
笑顔を崩さず、ただ頷くミチエ。泰滋は、ヤスエを抱き上げて叫んだ。
「ヤスエ、お前ももうすぐでお姉ちゃんになるぞー。」
ヤスエはわけがわからずも、突然の高い高いが嬉しくて、泰滋同様ハイテンションではしゃいでいた。
「…今度は男の子だといいわね。」
「そんなことはどうでもいい。元気な赤ちゃんが生まれて、ママが無事に出産を終えてくれれば…それで十分だよ。」
高い高いをやめようとせず喜び続ける泰滋とヤスエ。ミチエはそんなふたりをいつまでも笑顔で眺めていた。
「師匠!」
橋本が突然の呼びかけに驚いて振り向くと、肩で息をしている泰滋が立っていた。



