泰滋が連れてこられたのは簡素な一軒家。初老の男は、木戸門をくぐって庭から離れの小屋へ泰滋を引きずっていった。そしてヒビの入ったガラスがはめ込まれた安普請の門をガタガタと開けると、平木が大層に積まれた部屋に彼を放り投げた。
「こないなとこ連れてきて、自分をどないするつもりですか!」
泰滋の抗議にもまったく意も介せず、初老の男は喋り始めた。
「なんだ、いきなり京都弁になりおって…まあいい。ここはな、乾燥室といってな、木材を自然乾燥させる部屋だ。」
「それが、自分に何の関係が…。」
初老の男は、三つの木板を泰滋の前に置いて言葉を続ける。
「この三つの板のどれが一番乾燥しているか、当ててみろ。」
「なんですの、藪から棒に…どれも見た目同じやないですか。無理ですわ。」
「無理か?なら、板を持ってみろ…どうだ。」
「どれも同じような重さです。違いはないみたいですよ。」
「そうか…」
「だから、無理やて…。」
「どうだ、板をたたいてみんか。お前の耳で聞いてみたらわかるかもしれん。」
「そんなこと言わはっても…。」
泰滋は仕方なく板を叩いてみる。
「なるほど…わかりました。真ん中の板が一番乾燥しているようです。二番目が右、そして左が一番湿っている。」
初老の男は泰滋の答えを聞いて目を輝かせた。
「やっぱりわかるんだな、お前。」
「でも…。」
「でも、なんじゃ。」
「残念ながら、真ん中の板は、板の芯に小さな空洞があるようですよ。」
「お前…板を一度叩いただけで、そんなことまで分かるのか。」
初老の男は、半分呆れたような表情で泰滋の顔をまじまじと眺めていた。バツが悪くなった泰滋が口を開く。
「ところで、こんなこと自分にさせはって、どないしようというんです。」
「ああ…。」
初老の男は、泰滋の言葉に我に返ると、今度は奥の部屋に彼を導いた。灯りがともされていない奥の部屋ではあるが、月のあかりに見ると、中は工房になっていて、狭いながらもきっちりと整理がなされている。万力で挟まれた木片や柄のようなものが立ち並んでいた。
「わしの名前は、橋本カズオ。お前、わしの仕事を手伝ってくれんか。」
「仕事って…。」
「わしは、ギターを作っている。ギター職人だ。」
「こないなとこ連れてきて、自分をどないするつもりですか!」
泰滋の抗議にもまったく意も介せず、初老の男は喋り始めた。
「なんだ、いきなり京都弁になりおって…まあいい。ここはな、乾燥室といってな、木材を自然乾燥させる部屋だ。」
「それが、自分に何の関係が…。」
初老の男は、三つの木板を泰滋の前に置いて言葉を続ける。
「この三つの板のどれが一番乾燥しているか、当ててみろ。」
「なんですの、藪から棒に…どれも見た目同じやないですか。無理ですわ。」
「無理か?なら、板を持ってみろ…どうだ。」
「どれも同じような重さです。違いはないみたいですよ。」
「そうか…」
「だから、無理やて…。」
「どうだ、板をたたいてみんか。お前の耳で聞いてみたらわかるかもしれん。」
「そんなこと言わはっても…。」
泰滋は仕方なく板を叩いてみる。
「なるほど…わかりました。真ん中の板が一番乾燥しているようです。二番目が右、そして左が一番湿っている。」
初老の男は泰滋の答えを聞いて目を輝かせた。
「やっぱりわかるんだな、お前。」
「でも…。」
「でも、なんじゃ。」
「残念ながら、真ん中の板は、板の芯に小さな空洞があるようですよ。」
「お前…板を一度叩いただけで、そんなことまで分かるのか。」
初老の男は、半分呆れたような表情で泰滋の顔をまじまじと眺めていた。バツが悪くなった泰滋が口を開く。
「ところで、こんなこと自分にさせはって、どないしようというんです。」
「ああ…。」
初老の男は、泰滋の言葉に我に返ると、今度は奥の部屋に彼を導いた。灯りがともされていない奥の部屋ではあるが、月のあかりに見ると、中は工房になっていて、狭いながらもきっちりと整理がなされている。万力で挟まれた木片や柄のようなものが立ち並んでいた。
「わしの名前は、橋本カズオ。お前、わしの仕事を手伝ってくれんか。」
「仕事って…。」
「わしは、ギターを作っている。ギター職人だ。」



