飛び交う京都弁。その話されている内容はわかるものの、関東から来たミチエは、外国に来たような気分になっていた。旅行できた京都と生活の場としての京都は、まったく違った空気を持っている。家を離れて暮らすと言う意味をあらためて思い知らされたようで少し心細くなった。
そんな、ミチエの心情を知ってか知らずか、泰滋が帰路の道すがら、すぐに家に戻らずミチエをそばの賀茂川の河川敷に誘った。
「わあ…。」
住宅街に隣接する小高い土手を登りきり、眼下に広い河川敷とたゆやかに流れる賀茂川の水面が広がると、ミチエは思わず声を出した。
泰滋は自分のジャンパーを脱いで、土手を下る石の階段の上に敷くと、ミチエに腰かけるように促す。
「そんな…。」
ミチエの躊躇もお構いなく泰滋は、石段に座り込む。ミチエも仕方なく彼の隣に腰掛けた。
ふたりは黙ってしばらくゆっくりと流れる賀茂川を眺めていた。最初に口を開いたのは、泰滋であった。
「急にこんな遠くに呼び出してしまって…すみません。」
「いえ…。」
「でも…本当に具合悪くて…でも、ミチエさんが来ると聞いたら、元気が出ちゃって…。自分にもなぜだか…。」
「いいんです。泰滋さんがなんともなくてよかった。それに…お義母さまにも、早くご挨拶しなければと考えてましたから…。」
「そうですか…そう言っていただけると、助かりますが…。」
また、ふたりは川を見つめながら黙り込んだ。
「ところで…知ってます。この川の名前?」
「えっ…」
いきなりの問いに驚きながらも、ミチエは、必死に頭を働かせて答えを探った。
「たしか…『かもがわ』でしょ。」
「そう、知ってますよね。京都の顔になるくらいの代表的な川ですから…。遥か北の桟敷岳を水源として南へ流れています。ちょうど上京区出町付近で高野川と合流しますし、市街地をさらに南へ貫通し伏見区下鳥羽で桂川と合流します。そこで、この全長23キロの川の名前は終わります。」
泰滋は遠く川下に視線を向けながらも、言葉を続ける。
「ここから先は、地元の人間以外知る人も少ないんですが…同じ『かもがわ』という名前でも、実は文字が使い分けられているんです。水源から高野川合流点までを『賀茂川』と書き、それより下流を『鴨川』と書きます。もっとも、現河川法では全長を鴨川と総称していますがね…。」
「へえ、知りませんでした。」
そんな、ミチエの心情を知ってか知らずか、泰滋が帰路の道すがら、すぐに家に戻らずミチエをそばの賀茂川の河川敷に誘った。
「わあ…。」
住宅街に隣接する小高い土手を登りきり、眼下に広い河川敷とたゆやかに流れる賀茂川の水面が広がると、ミチエは思わず声を出した。
泰滋は自分のジャンパーを脱いで、土手を下る石の階段の上に敷くと、ミチエに腰かけるように促す。
「そんな…。」
ミチエの躊躇もお構いなく泰滋は、石段に座り込む。ミチエも仕方なく彼の隣に腰掛けた。
ふたりは黙ってしばらくゆっくりと流れる賀茂川を眺めていた。最初に口を開いたのは、泰滋であった。
「急にこんな遠くに呼び出してしまって…すみません。」
「いえ…。」
「でも…本当に具合悪くて…でも、ミチエさんが来ると聞いたら、元気が出ちゃって…。自分にもなぜだか…。」
「いいんです。泰滋さんがなんともなくてよかった。それに…お義母さまにも、早くご挨拶しなければと考えてましたから…。」
「そうですか…そう言っていただけると、助かりますが…。」
また、ふたりは川を見つめながら黙り込んだ。
「ところで…知ってます。この川の名前?」
「えっ…」
いきなりの問いに驚きながらも、ミチエは、必死に頭を働かせて答えを探った。
「たしか…『かもがわ』でしょ。」
「そう、知ってますよね。京都の顔になるくらいの代表的な川ですから…。遥か北の桟敷岳を水源として南へ流れています。ちょうど上京区出町付近で高野川と合流しますし、市街地をさらに南へ貫通し伏見区下鳥羽で桂川と合流します。そこで、この全長23キロの川の名前は終わります。」
泰滋は遠く川下に視線を向けながらも、言葉を続ける。
「ここから先は、地元の人間以外知る人も少ないんですが…同じ『かもがわ』という名前でも、実は文字が使い分けられているんです。水源から高野川合流点までを『賀茂川』と書き、それより下流を『鴨川』と書きます。もっとも、現河川法では全長を鴨川と総称していますがね…。」
「へえ、知りませんでした。」



