~リオネ~

私がスールズ村に来て数日が経った今。

私はもうスールズ村に慣れて村人から慕われるようになっていた。


今日も天気は快晴。
雨なんてここ最近全く目にしてない。

スールズ村は元々雨が余り降らない村として聞いたことはあったが、本当に降らないとは思ってなかった。

雲1つない青空の下……

私は生きている。
今……ここに立っている。息をしている。


それが、一番幸せなのかもしれない。

――死ぬよりかは。。

眠りにつくとふと思い出す。

私の故郷、、サリザン王国が滅んだ頃を。

豊かな町は瞬く間に炎の海と化し、父様が誇っていた堅固な守りが意図も容易く突破されたこと。

そして、私を逃がしてくれた、、優しくて誇らしい兄様。


王家の皆は殺されたのだろうか。。


―――それともまだ誰かが……

「おーい……リオネ……」

後ろから聞こえた声で我に返り振り返る。

振り返ってみると目の前にジョセフさんが居た。
起きたばかりなのだろうか。
髪は寝癖が酷くボサボサで今にでも寝そうな目で私を見ている。

そんな姿に私は笑いが堪えきれず、つい吹き出してしまった。

「なんで笑うんだよ……」

クスクスと笑う私を唖然として見るジョセフさんの顔がまた面白い。

「だって…ジョセフさん、
ぷっ!髪が…酷いですよ
はは…!」

「なっ……!!」

笑われた理由が分かるとジョセフさんは顔を真っ赤にして髪を無理に弄る。
そんな姿がもう堪らなく笑えてきて…とうとう私は腹を抱えて笑っていた。

「そ、そんなに笑うことねえだろおおお!!」

そういうなりジョセフさんは物凄い早さで家へと走っていってしまった。

余程眠くて気が回らなかったんだろうな~。
昨日は夜遅くまでなにか書き物をしていたし。

でも、そんな庶民的な生活を見るとなんだか心が落ち着いてくるんだよね。

「全く。あいつはアホ坊主か」

「ひゃっ!!」

いきなりの声に私は思わず飛び退いてしまった。
なに!?一体どこから声が!?

しかも知らない人の声。
当たりを見回しても誰も近くに居ない。
居るとしてもスールズ村の民の人が少しだけ。しかも……声が聞こえるには大声を出さないと聞こえないほど遠い。

じゃあ今のは…?
嫌な予感はしないがなんだか怖い……。

「嬢ちゃん、ここだ。
上だ、うーえー」

え?上……!?
その声の通り上を見る。

と、見えたのは木。
その木の上に中年ぐらいの男の人が枝に寄り掛かってこちらを見下ろしていた。

「どうも。
急に声を掛けたせいかビックリしたかい?」

落ち着いた冷静な声。
茶色の髪をしていて、今にも飲まれそうな純粋で濁りのない黒の瞳。

いたって普通の中年男性……なのだろう。
でも……それでも……

なんか……この人……

「……変な人だ」