ほとんどの場合は、破水後24時間以内には陣痛が始まる。真奈美は病院へ連れて行かれ、浣腸と剃毛など、いよいよ出産に向けての最後の苦しみに立ち向かう準備をした。真奈美の入った病院に、秀麗と秋良が付き添っていたが、それだけではなく、いかつい男達も付いてきて、幾重もの監視の眼が真奈美を取り囲む。秀麗も秋良も不愉快極まりないが、代議士夫人の指示となると、それを拒否することもできない。
真奈美が病室で落ち着いてきたのを確認すると、秋良は秀麗をラウンジに誘った。秋良はカフェカウンターから、紙コップに入ったコーヒーを取って来る。コップのひとつを秀麗に渡して彼女の横に座ったものの、彼はなかなか口を開かなかった。いつものことなので、秀麗から口火を切った。
「いつこちらに着いたの?」
「JAL723便だから、夜7時頃だ。」
「家に来たのは深夜でしょ。それまで何していたの?」
「出産後の真奈美の隠れ家を探していた。」
「なんで出産後に隠れなきゃいけないの?」
秋良は黙って答えようとしない。秀麗は、秋良の身体にただならぬ気配を感じて詰め寄る。
「どういうことなの?」
秋良は重い口をようやく開いた。
「実は、真奈美のお腹にいる子は、代議士夫婦から提供されていた受精卵ではない。」
絶句する秀麗。秋良は提供された受精卵が生命活動を停止した日、クリニックで代議士夫人との間で起きたことを説明した。
「じゃ今ウテルスの中に居る赤ちゃんは誰の子なの?」
「そんなことは重要じゃない。重要なのは、戸籍上の実子を欲しがる夫人が、受精卵のからくりを知っている俺達を放っておくわけないという事実だ。」
「だから急に事業の整理なんて言い始めたのね。」
「ああ、幸い時間稼ぎが出来たおかげで日本の方の準備は整ったよ。」
「呆れてものが言えないわ…。」
「しかし、残念ながら、用心深い夫人のお陰で、ここにいる俺たちのリスクは高まったようだ。」
秋良が傍でたむろする男達をあごで示した。
「だから、秀麗にお願いしたい…。」
「最初からのパートナーである私に、ここまで秘密にしておきながら、何を今さらお願いがあるの。」
きつい秀麗の非難にも、秋良は表情を変えずに言葉を続けた。
「出産された子どもを夫人に渡す間、俺が時間稼ぎをするから、出産を終えて動けない真奈美を、隠れ家に連れて行ってもらえないか。」
真奈美が病室で落ち着いてきたのを確認すると、秋良は秀麗をラウンジに誘った。秋良はカフェカウンターから、紙コップに入ったコーヒーを取って来る。コップのひとつを秀麗に渡して彼女の横に座ったものの、彼はなかなか口を開かなかった。いつものことなので、秀麗から口火を切った。
「いつこちらに着いたの?」
「JAL723便だから、夜7時頃だ。」
「家に来たのは深夜でしょ。それまで何していたの?」
「出産後の真奈美の隠れ家を探していた。」
「なんで出産後に隠れなきゃいけないの?」
秋良は黙って答えようとしない。秀麗は、秋良の身体にただならぬ気配を感じて詰め寄る。
「どういうことなの?」
秋良は重い口をようやく開いた。
「実は、真奈美のお腹にいる子は、代議士夫婦から提供されていた受精卵ではない。」
絶句する秀麗。秋良は提供された受精卵が生命活動を停止した日、クリニックで代議士夫人との間で起きたことを説明した。
「じゃ今ウテルスの中に居る赤ちゃんは誰の子なの?」
「そんなことは重要じゃない。重要なのは、戸籍上の実子を欲しがる夫人が、受精卵のからくりを知っている俺達を放っておくわけないという事実だ。」
「だから急に事業の整理なんて言い始めたのね。」
「ああ、幸い時間稼ぎが出来たおかげで日本の方の準備は整ったよ。」
「呆れてものが言えないわ…。」
「しかし、残念ながら、用心深い夫人のお陰で、ここにいる俺たちのリスクは高まったようだ。」
秋良が傍でたむろする男達をあごで示した。
「だから、秀麗にお願いしたい…。」
「最初からのパートナーである私に、ここまで秘密にしておきながら、何を今さらお願いがあるの。」
きつい秀麗の非難にも、秋良は表情を変えずに言葉を続けた。
「出産された子どもを夫人に渡す間、俺が時間稼ぎをするから、出産を終えて動けない真奈美を、隠れ家に連れて行ってもらえないか。」



