それだけ言い放つと、代議士夫人は席を蹴って部屋を出て行った。
部屋に残された秋良と守本ドクター。やがて事務スタッフが、接客用に出したコーヒーカップを下げに入って来た。
「三室はどこにいる?」
秋良がスタッフに聞いた。
「さきほど森さんを家に送りに行かれましたが。」
「そうか…。」
事務スタッフが部屋を出るのを確認すると、守本ドクターがため息をつきながら口を開く。
「どうしますか?CEO。」
「とりあえず彼女を呼びもどすか…。」
「呼び戻しても、胚盤胞の冷凍ストックなんてありません。」
「血液型の適合する冷凍精子は?」
「彼女をサロゲートマザーにするんですか…。契約違反ですよね。彼女が納得するわけが無い。」
「あくまでも選択肢の検討だ。」
「ご存じのように精子は女性の体内で3日から5日の間生存しますが、卵子が生きられるのはわずか12時間から24時間程度です。彼女は今日排卵日だから、もう排卵しているかもしれない。彼女は母方の血液型に適合しているからいいですが、父方に適合する凍結精子を探しだして、解凍し、今夜中に彼女の卵子に振りかけるなんて不可能です。」
「父方の血液型は?」
「A型です。」
秋良は黙って考え込んでいた。
「あーあ、2週間後に姿を消せるように準備するしかないか…。」
守本ドクターの嘆きも耳に入らないかのように、秋良はただ黙って考え続けていた。
家に帰る際にも雨は降っていたが、同じ雨なのに真奈美には、その雨が今度はダンスを踊っているように感じた。単にXデーが延期になっただけとは理解しているが、少なくとも1カ月先までは、今のままの自分でいられることが嬉しかったのだ。そして何よりも、今の自分のまま、また1カ月秋良との生活が続けられることが、彼女の心を軽くしていた。
秋良が心の底に秘めた本来の姿を真奈美にさらけ出した夜以来、あのクールでスマートな秋良が、こどものように真奈美に甘え出した。それは彼が自分だけに見せるものであることがわかるだけに、余計に彼が愛おしい。短くはあるが彼との生活で、いつからか、彼を自分の男であるかのように感じ始めていた。家に帰ると、軽やかな気持ちで、やがて帰って来るはずの秋良のために、食事の準備を急いだ。
部屋に残された秋良と守本ドクター。やがて事務スタッフが、接客用に出したコーヒーカップを下げに入って来た。
「三室はどこにいる?」
秋良がスタッフに聞いた。
「さきほど森さんを家に送りに行かれましたが。」
「そうか…。」
事務スタッフが部屋を出るのを確認すると、守本ドクターがため息をつきながら口を開く。
「どうしますか?CEO。」
「とりあえず彼女を呼びもどすか…。」
「呼び戻しても、胚盤胞の冷凍ストックなんてありません。」
「血液型の適合する冷凍精子は?」
「彼女をサロゲートマザーにするんですか…。契約違反ですよね。彼女が納得するわけが無い。」
「あくまでも選択肢の検討だ。」
「ご存じのように精子は女性の体内で3日から5日の間生存しますが、卵子が生きられるのはわずか12時間から24時間程度です。彼女は今日排卵日だから、もう排卵しているかもしれない。彼女は母方の血液型に適合しているからいいですが、父方に適合する凍結精子を探しだして、解凍し、今夜中に彼女の卵子に振りかけるなんて不可能です。」
「父方の血液型は?」
「A型です。」
秋良は黙って考え込んでいた。
「あーあ、2週間後に姿を消せるように準備するしかないか…。」
守本ドクターの嘆きも耳に入らないかのように、秋良はただ黙って考え続けていた。
家に帰る際にも雨は降っていたが、同じ雨なのに真奈美には、その雨が今度はダンスを踊っているように感じた。単にXデーが延期になっただけとは理解しているが、少なくとも1カ月先までは、今のままの自分でいられることが嬉しかったのだ。そして何よりも、今の自分のまま、また1カ月秋良との生活が続けられることが、彼女の心を軽くしていた。
秋良が心の底に秘めた本来の姿を真奈美にさらけ出した夜以来、あのクールでスマートな秋良が、こどものように真奈美に甘え出した。それは彼が自分だけに見せるものであることがわかるだけに、余計に彼が愛おしい。短くはあるが彼との生活で、いつからか、彼を自分の男であるかのように感じ始めていた。家に帰ると、軽やかな気持ちで、やがて帰って来るはずの秋良のために、食事の準備を急いだ。



