不安な顔をする真奈美に、秋良は、バーニャカウダのディプソースをたっぷりつけた有機野菜を差し出した。
「ほら、食べろ。」
「秋良さんは、ニンジンが嫌いだから私に押し付けるわけ?」
「いいから…。」
真奈美は笑いながら、秋良が手に持つ野菜をかじる。秋良は手に残った野菜を自分の口に入れた。たった2週間の同居ではあったが、ふたりはこんなことが自然にできるようになっていだ。
真奈美は、ナイフとフォークをテーブルに置くと甘えるような声で言った。
「ねえ、お願いがあるんだけど…。」
「プラダのバックはダメだぞ。」
「違うわよ。」
「なに?」
「誰かのタマゴだとしても、私のお腹の中にいる間は私の赤ちゃんでしょ。」
秋良は黙って聞いていた。
「私の赤ちゃんの時は、パパがいないと可愛そうな気がするの。その間だけでいいから、赤ちゃんのパパになってくれない?」
絶句する秋良。
「ただ出産までそばにいてくれて、たまにお腹に話しかけたり、触ったりしてくれればいいのよ。」
「…何言ってるんだ。」
「最初から最後までをしっかりと見届けるのが、この世界に引き込んだものの最低限のマナーだって言ってたじゃない。」
「それはお前が言ったんだぞ。」
「お願いします。」
真奈美がテーブルに両手を付いて頭を下げた。秋良にはその肩がやけにか細く感じられた。
「どんなに頼まれても、親父のマネは出来ない。しかし、最後まで見届けるという約束は守る。」
真奈美が顔を上げた。半分の失望と半分の安堵で、その瞳には複雑な光が浮かんでいた。真奈美は、食事を再開する。
「ねえ、私がどんな女子高生だったか知りたい?」
「話したければ、勝手に話せ。」
真奈美は、秋良に勢いよく喋りはじめる。しかし、話しながらかすみ草のもうひとつの花言葉を想い出した。それは『きよらかな恋』。秋良と自分の間にある花としては、およそ似つかわしくない花だと真奈美は感じていた。
その日は朝から雨が降っていた。真奈美と秋良は昨夜とは違って、お互いにひとこともしゃべらず朝食をとった。視線も合わさず、『三室が迎えに来るから』とだけ言って出ていった秋良。バスケットの試合じゃあるまいし、こんなこと頑張れなんて励まされるようなことじゃない。別に彼に何を求めていたわけではないが、真奈美はまた突き放されたような気分になっていた。
「ほら、食べろ。」
「秋良さんは、ニンジンが嫌いだから私に押し付けるわけ?」
「いいから…。」
真奈美は笑いながら、秋良が手に持つ野菜をかじる。秋良は手に残った野菜を自分の口に入れた。たった2週間の同居ではあったが、ふたりはこんなことが自然にできるようになっていだ。
真奈美は、ナイフとフォークをテーブルに置くと甘えるような声で言った。
「ねえ、お願いがあるんだけど…。」
「プラダのバックはダメだぞ。」
「違うわよ。」
「なに?」
「誰かのタマゴだとしても、私のお腹の中にいる間は私の赤ちゃんでしょ。」
秋良は黙って聞いていた。
「私の赤ちゃんの時は、パパがいないと可愛そうな気がするの。その間だけでいいから、赤ちゃんのパパになってくれない?」
絶句する秋良。
「ただ出産までそばにいてくれて、たまにお腹に話しかけたり、触ったりしてくれればいいのよ。」
「…何言ってるんだ。」
「最初から最後までをしっかりと見届けるのが、この世界に引き込んだものの最低限のマナーだって言ってたじゃない。」
「それはお前が言ったんだぞ。」
「お願いします。」
真奈美がテーブルに両手を付いて頭を下げた。秋良にはその肩がやけにか細く感じられた。
「どんなに頼まれても、親父のマネは出来ない。しかし、最後まで見届けるという約束は守る。」
真奈美が顔を上げた。半分の失望と半分の安堵で、その瞳には複雑な光が浮かんでいた。真奈美は、食事を再開する。
「ねえ、私がどんな女子高生だったか知りたい?」
「話したければ、勝手に話せ。」
真奈美は、秋良に勢いよく喋りはじめる。しかし、話しながらかすみ草のもうひとつの花言葉を想い出した。それは『きよらかな恋』。秋良と自分の間にある花としては、およそ似つかわしくない花だと真奈美は感じていた。
その日は朝から雨が降っていた。真奈美と秋良は昨夜とは違って、お互いにひとこともしゃべらず朝食をとった。視線も合わさず、『三室が迎えに来るから』とだけ言って出ていった秋良。バスケットの試合じゃあるまいし、こんなこと頑張れなんて励まされるようなことじゃない。別に彼に何を求めていたわけではないが、真奈美はまた突き放されたような気分になっていた。



