ウ・テ・ル・ス

「すごい部屋ね、お姉ちゃん。この部屋で暮らしているの?」
「…住み込みの家政婦みたいなものよ。」
「家政婦の買い物に主人が付き合ったりするの?」
「それに…ふたりで寄り添って帰って来る姿は、尋常じゃなかったわよ。」
「しかも…家政婦がメインの寝室のでっかいベッドで寝ていいの?」
 矢継ぎ早なミナミの追及に真奈美もたじろぐ。
「まあ、いろいろあって…。」
「あの男の人誰?」
「社長さんよ。」
「まさかお姉ちゃん、あの社長さんの愛人?」
「ミナミ怒るわよ。」
「いずれにしろ、私の学費もお母さんの治療費もあの社長さんから出てるのは間違いないようね。」
「でも安心して、私の仕事に対する正当な報酬だから…。」
「まさか家事の報酬じゃないわよね。仕事ってなに?」
 真奈美は、ミナミの質問には答えず、逆に質問を切り返してごまかした。
「でも、よくここが解ったわよね。」
「たったふたりの姉妹だもの…お姉ちゃんが何処へ行っても探し出すわよ。」
「お母さんは?」
「今、重粒子線治療で群馬に入院中よ。だいぶ良くなったみたい。」
「そう…よかった。なら、晩御飯食べていくでしょ。テーブルを片付けて…。食器も並べてくれる。」
 姉妹は、小さなアパートの台所に戻ったように、楽しくおしゃべりしながら晩御飯の用意をした。

 ミナミは斜に座って食事する秋良を興味深く観察した。洗練された部屋着を身にまとい、リラックスしたα波を全身から発する彼は、表参道を闊歩していた時の鋭さとは違った魅力を感じさせる。
「あのぉ、わたしミナミって言います。姉がお世話になって…。」
「ああ。」
 男はワイルドの方が絶対いい。秋良の無愛想な返事もミナミは好感が持てた。
「わたしのこと覚えてません?表参道の高級カフェでご馳走してもらっちゃって…。」
「えっ、ミナミ。秋良さんとそんなことあったの?」
「俺は女の顔を覚えられない性質なんでね。」
 かっこ良過ぎ。こんなソリッドで金持ちのお義兄さんが欲しかったのだ。
「まさかミナミ…また、スカウトに出会うために、街をうろついているんじゃないでしょうね。…あっ、秋良さん、ニンジン残しちゃだめ。もう大人なんだから、好きなものばかり食べないで、多少嫌いでもちゃんと食べなきゃ。」