秋良は激しく首を振った。振りながらも涙が溢れて止まらない。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。」
さらに激しく頭を振る秋良。その時、秋良は自分の頭が、優しく柔らかな胸に包まれるのを感じた。
「いいのよ。嫌なことはしなくていいの。」
秋良が顔を上げると、そこに真奈美がいた。少年もアパートも消え去り、彼女の温かな息だけが彼のまつ毛を撫ぜていた。彼女は秋良の頬を伝わる涙を、その細い指で拭いながらも、自分自身も涙ぐんでいるようだった。
「わかったから…。嫌なことはもうしないから…。家に帰りましょう。」
秋良は立とうとするが、泥酔している足が言うことを聞いてくれない。大きな秋良が小さな真奈美の身体にすがるようにしながら立ち上がった。真奈美の細い肩を借りて歩く秋良。身を寄せ合ってできたひとつの影が、よろよろ揺れながら地面を滑っていった。
「えーっ、泥酔してマンションの前に転がっていたの?」
三室の驚きの質問に、真奈美の声が電話口から聞こえてきた。
『はい、あまりにも帰りが遅いので心配して出てみたんですが、その時彼を発見しました。しかも途中どこかの水溜りにハマったらしくて、全身ビショビショでしたよ。』
「それで。」
『やっとこさ家に運びあげたんですが、夜風で体が冷えたらしくて、今朝になったら熱が出て起きられないんです。』
「どんなに酒飲んでも決して自分を失わない人なんだけど…珍しいこともあるもんだ。」
『どうも私が怒らせちゃったことが原因みたいで…。』
「やってくれるね。」
『済みません…。さっきお医者さんに連絡したので、まもなく往診に来てくれるはずです。』
「そうか、いずれにしろ今日は出てこられそうもないな。」
『ええ、熱が下がるまで私が面倒見ますから。』
「そうしてくれると助かるよ。後で様子見て連絡くれるか。」
『わかりました。』
「ありがとう。それじゃ。」
三室が電話を切ると定例会議に集まっている各マネージャーに報告した。
「社長が熱出ちゃって、出てこられそうにありません。今日は会議中止です。」
「珍しいこともあるもんだ…。」
守本ドクターが立ちあがりながら言った。
「風邪?」
秀麗も眉間にしわを寄せて三室に質問する。
「たぶんそうでしょ。泥酔して水溜りにハマった上に、外で転がって寝てれば、そりゃ風邪もひきますよ。」
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。」
さらに激しく頭を振る秋良。その時、秋良は自分の頭が、優しく柔らかな胸に包まれるのを感じた。
「いいのよ。嫌なことはしなくていいの。」
秋良が顔を上げると、そこに真奈美がいた。少年もアパートも消え去り、彼女の温かな息だけが彼のまつ毛を撫ぜていた。彼女は秋良の頬を伝わる涙を、その細い指で拭いながらも、自分自身も涙ぐんでいるようだった。
「わかったから…。嫌なことはもうしないから…。家に帰りましょう。」
秋良は立とうとするが、泥酔している足が言うことを聞いてくれない。大きな秋良が小さな真奈美の身体にすがるようにしながら立ち上がった。真奈美の細い肩を借りて歩く秋良。身を寄せ合ってできたひとつの影が、よろよろ揺れながら地面を滑っていった。
「えーっ、泥酔してマンションの前に転がっていたの?」
三室の驚きの質問に、真奈美の声が電話口から聞こえてきた。
『はい、あまりにも帰りが遅いので心配して出てみたんですが、その時彼を発見しました。しかも途中どこかの水溜りにハマったらしくて、全身ビショビショでしたよ。』
「それで。」
『やっとこさ家に運びあげたんですが、夜風で体が冷えたらしくて、今朝になったら熱が出て起きられないんです。』
「どんなに酒飲んでも決して自分を失わない人なんだけど…珍しいこともあるもんだ。」
『どうも私が怒らせちゃったことが原因みたいで…。』
「やってくれるね。」
『済みません…。さっきお医者さんに連絡したので、まもなく往診に来てくれるはずです。』
「そうか、いずれにしろ今日は出てこられそうもないな。」
『ええ、熱が下がるまで私が面倒見ますから。』
「そうしてくれると助かるよ。後で様子見て連絡くれるか。」
『わかりました。』
「ありがとう。それじゃ。」
三室が電話を切ると定例会議に集まっている各マネージャーに報告した。
「社長が熱出ちゃって、出てこられそうにありません。今日は会議中止です。」
「珍しいこともあるもんだ…。」
守本ドクターが立ちあがりながら言った。
「風邪?」
秀麗も眉間にしわを寄せて三室に質問する。
「たぶんそうでしょ。泥酔して水溜りにハマった上に、外で転がって寝てれば、そりゃ風邪もひきますよ。」



