ミナミは久しぶりにゆったりとした気持ちで表参道を歩いていた。母を群馬大学重粒子線医学センターへ送ってきて昨日家に帰って来ていた。母は今回の照射が終わるまで、医学センター近隣の療養施設に泊まり込む。家を出た姉の代わりに、母の看護、高校生活や家事に追われていた毎日だったが、今は久しぶりの自分の時間を楽しんでいた。
豪華な晩御飯を家族みんなで楽しんだ夜、突然姉が新しい仕事のために家を出ると言いだした時は驚いた。泣きながら留まるようにお願いしたが、姉は悲しそうな顔で荷物をまとめると母や私を振り切って出て行った。しかしそれからというもの、不思議なことに何処からか金が湧いてきて、生活や母の治療がスムーズに運び始めた。時折見せていた下品な男達の姿もまったく見なくなった。
家を出てからも、姉は2日に一度は連絡をくれて、母やミナミが元気なことを確認すると安心して『また連絡するから』と言って電話を切る。姉は一方的に病気ことや高校のことを心配そうに尋ねるだけで、何処にいるのかとこちらが聞いても、決して自分の居場所を明かすことはなかった。
姉の経済的支援で、今ではお小遣いも多少余裕が出来るようになり、ミナミは新しい服を買った。今までなら、表参道を何往復か歩いていれば、どこかの芸能プロダクションがスカウトしてくれるかもしれないと考えるところだが、一度騙されそうになった経験のあるミナミは、もうそんな妄想に浸ることができない。『明日の安室さまになる』という夢は、誰も運んできてはくれない、自分で掴まなければならないのだ。そのためには、アーティストになるための訓練をすることがどうしても必要だと考えていた。それも、出来るだけ早く…。高校を卒業するまで待っていたら実力がつく頃にはおばさんになってしまう。母の看護、高校生活、家事と忙しい毎日ではあったが、睡眠を減らしてでもそれをやり遂げる意欲と自信はあった。しかしながら、いくら小遣いに余裕が出てきたからといっても、ミュージックスクールに通えるだけの額を工面することはできない。
豪華な晩御飯を家族みんなで楽しんだ夜、突然姉が新しい仕事のために家を出ると言いだした時は驚いた。泣きながら留まるようにお願いしたが、姉は悲しそうな顔で荷物をまとめると母や私を振り切って出て行った。しかしそれからというもの、不思議なことに何処からか金が湧いてきて、生活や母の治療がスムーズに運び始めた。時折見せていた下品な男達の姿もまったく見なくなった。
家を出てからも、姉は2日に一度は連絡をくれて、母やミナミが元気なことを確認すると安心して『また連絡するから』と言って電話を切る。姉は一方的に病気ことや高校のことを心配そうに尋ねるだけで、何処にいるのかとこちらが聞いても、決して自分の居場所を明かすことはなかった。
姉の経済的支援で、今ではお小遣いも多少余裕が出来るようになり、ミナミは新しい服を買った。今までなら、表参道を何往復か歩いていれば、どこかの芸能プロダクションがスカウトしてくれるかもしれないと考えるところだが、一度騙されそうになった経験のあるミナミは、もうそんな妄想に浸ることができない。『明日の安室さまになる』という夢は、誰も運んできてはくれない、自分で掴まなければならないのだ。そのためには、アーティストになるための訓練をすることがどうしても必要だと考えていた。それも、出来るだけ早く…。高校を卒業するまで待っていたら実力がつく頃にはおばさんになってしまう。母の看護、高校生活、家事と忙しい毎日ではあったが、睡眠を減らしてでもそれをやり遂げる意欲と自信はあった。しかしながら、いくら小遣いに余裕が出てきたからといっても、ミュージックスクールに通えるだけの額を工面することはできない。



