配送センターの朝は早い。大型トラックで運ばれてきた膨大な数の荷物。センターの担当が、大まかにエリア別にその荷物を仕分ける。そこから配送員の荷物の奪い合いが始まる。できるだけ限られたエリアで効率よく配送できる荷物を物色するのだ。1日でこなせる自分の作業能力を見極め、配送員たちは最大数の荷物を自分が運転する小型の配送トラックに積み込んだ。真奈美も女ながら配送員として独り立ちし、小型トラック一台を受け持っている。今ではバスケで鍛えたフットワークを活かし、男の配送員に負けずに有利な荷物を獲得できるようになっていた。
真奈美はその日も快調に荷物を獲得すると、誰よりも早く、配送センターを飛び出していった。配送先の不在も少なく、荷物が次々とはけていく。よし、今日はツイてる。早く帰れそうだ。そう思うと余計に車を軽快に動かしたくなる。調子が良い日こそ、実は一番危険な日なのだ。御多分に洩れず、縦列駐車から抜け出るために、ハンドルを切りながら少しバックした時、真奈美の小型トラックが何かに当たり、ガラスが欠ける耳障りな音がした。
『やっちゃった!』
真奈美の小型トラックの後部が何かと接触したのだ。真奈美はすぐさま運転席から飛び出て後ろに回ると、自分の車には傷ひとつもないが、後ろに停車していた車の片方のヘッドライトが無残にも砕け散っているのを確認した。状況からすると真奈美の後方不注意と言うことになるのだが、始動前に確認した時より、後ろの車の位置が自分のトラックに寄っている気がしてならない。しかしだからと言って、自分がここで開き直って業務中にモメることも出来ない。相手の車の運転席のドアが開くと、とにかく真奈美は頭を下げた。
「私の不注意でぶつけてしまって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
頭をあげて相手を見た瞬間、真奈美は息を飲んだ。オリュンポス十二神のひとりアポロンがそこにいた。長身で恵まれた体躯のその男はサングラスを掛けていて、その表情や眼の色などは確認できなかったが、その白く光った肌と鋭いあごの線は、女子高時代の教科書で、飽きずに眺め続けたベルヴェデーレのアポロンそのものだった。
真奈美はその日も快調に荷物を獲得すると、誰よりも早く、配送センターを飛び出していった。配送先の不在も少なく、荷物が次々とはけていく。よし、今日はツイてる。早く帰れそうだ。そう思うと余計に車を軽快に動かしたくなる。調子が良い日こそ、実は一番危険な日なのだ。御多分に洩れず、縦列駐車から抜け出るために、ハンドルを切りながら少しバックした時、真奈美の小型トラックが何かに当たり、ガラスが欠ける耳障りな音がした。
『やっちゃった!』
真奈美の小型トラックの後部が何かと接触したのだ。真奈美はすぐさま運転席から飛び出て後ろに回ると、自分の車には傷ひとつもないが、後ろに停車していた車の片方のヘッドライトが無残にも砕け散っているのを確認した。状況からすると真奈美の後方不注意と言うことになるのだが、始動前に確認した時より、後ろの車の位置が自分のトラックに寄っている気がしてならない。しかしだからと言って、自分がここで開き直って業務中にモメることも出来ない。相手の車の運転席のドアが開くと、とにかく真奈美は頭を下げた。
「私の不注意でぶつけてしまって申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
頭をあげて相手を見た瞬間、真奈美は息を飲んだ。オリュンポス十二神のひとりアポロンがそこにいた。長身で恵まれた体躯のその男はサングラスを掛けていて、その表情や眼の色などは確認できなかったが、その白く光った肌と鋭いあごの線は、女子高時代の教科書で、飽きずに眺め続けたベルヴェデーレのアポロンそのものだった。



