翌日、早速真奈美のスマートフォンに担当からの連絡が入り、検査の日時と場所が告げられた。婦人科ドックに入る当日、担当に出迎えられたが、その担当と言うのが、以前オフィスの中に入れてくれた失礼な男であり、三室という名であることを知った。
「君がスカウトされるとはね…。」
 真奈美を見た三室は、開口一番そう言って彼女を出迎えた。
「ここで脱いだら納得してもらえます。わたし、裸になったら凄いんです。」
 三室は笑いをかみしめながら、真奈美を守本クリニックの婦人科ドックへと導いていた。
 真奈美へのメディカルチェックの項目は半端ではなかった。身体測定、X線骨密度検査 (DEXA法)、眼科、聴力、尿、血液などの一般的な検査から、真奈美が今まで見たこともないような最新機器を使用しての循環器、呼吸器、消化器の各検査。特に婦人科に関する検査は、子宮体部細胞診(子宮体がん検査)、黄体形成ホルモン・卵胞刺激ホルモンなどの女性ホルモン検査、エストラジオール・クラミジア・トリコモナス・カンジダ感染・淋菌・ハイリスクHPV検査・HIV抗体検査・梅毒反応などのSTD検査、そして各種腫瘍マーカー、遺伝子検査、染色体検査など、思いつくありとあらゆる検査が彼女を待っていた。
「これをクリアできたら、わたしは完ぺきな女性ってことね。」
「センス以外はね…。」
 真奈美の独り言も聞き逃さず、三室がちょっかいを出す。真奈美が気分を害して三室に応酬した。
「体力測定はないんですか?あたし凄い自信があるんですけど…。」
「看護師さん、いつもはやらないけど、この娘には性別判定のDNA検査を特別にお願いします。」
「ウギーッ!」
 悔しがる真奈美を尻目に、三室は笑いながら彼女を看護師に引き渡した。
 実のところ真奈美は、まるで競売される食用牛が、値段をつけられるために検査されている気分になっていた。これから自分の身体に振りかかることを考えるとやりきれない気分ではあったが、そうすると決めてしまった今では、もう自分の不遇を嘆き続けていても仕方がない。今日家を出る時には、努めて明るく元気に振舞おうと心に決めていた。