「ミナミ!あんたそんな考えだから…。」
「キャハハハッ、女を売れる時は売らなくちゃ。そのうち誰も買ってくれなくなるわよ。」
ミナミは真奈美の腕から逃れて駆け出した。
「こら!」
お茶目な妹を笑いながら追っかける姉。この可憐な妹の青春を、大切にしてあげたい。真奈美は逃げ回る妹の姿を見ながらそう思った。
「ミナミ、ちょっと待ってよ。一緒に帰ろうよ。」
妹の若さに追いつけない姉は、やがて捕まえるのを諦めて、妹の背に呼びかけた。
「そう言って捕まえる気でしょ、騙されないわよ。」
ミナミは笑い声をあげながら地下鉄の階段を駆け下りていった。
クアラルンプールを出たマレーシア航空MH092便は、成田空港へ午後6時40分に到着する。しかしこの便は必ずと言っていいほど30分は遅れる。スローライフのお国柄とは言え、秀麗の性格では、なかなか慣れることができない。
しかしながら、秀麗はマレーシアが気に入っていた。都市部ではインフラも整備されており、東南アジアの中でも高い生活水準を誇る国でありながら、物価水準が日本より格段に安い点がその理由だった。多少のばらつきはあるが、総合的に見て日本の3分の1程度の物価水準といわれている。また、医療の面に眼を向けてみると、マレーシアは欧米の大学で医師免許や博士号をとった医師が多く、大きな私立病院などでは最新の医療設備が整備されるなど、医療水準も先進国に匹敵している。当然、先進国より医療費が安く、医療レベルも劣っていないため、近隣の東南アジア諸国から『メディカルツアー』でマレーシアを訪れる人も少なくない。クアラルンプールなどでは日本語が話せる医師や日本人看護婦、日本語通訳が在籍する病院が幾つもある。これらの点が、彼女がビジネスの契約完結の場としてここを選んだ理由だ。
秀麗は、ビジネスクラスのシートを起こすと、アイマスクをはずし、外の雲海を眩しそうに眺めた。彼女の父は、香港で中規模な病院を営む医師である。父の苦労を見ていた彼女は、医師になって父を継ぐ気など毛頭なかった。元来の野心の大きさもあいまって学生時代から、新しいビジネスを求めて模索していた。そして、医療情報システムの勉強で日本に留学した際に秋良と出会った。
「キャハハハッ、女を売れる時は売らなくちゃ。そのうち誰も買ってくれなくなるわよ。」
ミナミは真奈美の腕から逃れて駆け出した。
「こら!」
お茶目な妹を笑いながら追っかける姉。この可憐な妹の青春を、大切にしてあげたい。真奈美は逃げ回る妹の姿を見ながらそう思った。
「ミナミ、ちょっと待ってよ。一緒に帰ろうよ。」
妹の若さに追いつけない姉は、やがて捕まえるのを諦めて、妹の背に呼びかけた。
「そう言って捕まえる気でしょ、騙されないわよ。」
ミナミは笑い声をあげながら地下鉄の階段を駆け下りていった。
クアラルンプールを出たマレーシア航空MH092便は、成田空港へ午後6時40分に到着する。しかしこの便は必ずと言っていいほど30分は遅れる。スローライフのお国柄とは言え、秀麗の性格では、なかなか慣れることができない。
しかしながら、秀麗はマレーシアが気に入っていた。都市部ではインフラも整備されており、東南アジアの中でも高い生活水準を誇る国でありながら、物価水準が日本より格段に安い点がその理由だった。多少のばらつきはあるが、総合的に見て日本の3分の1程度の物価水準といわれている。また、医療の面に眼を向けてみると、マレーシアは欧米の大学で医師免許や博士号をとった医師が多く、大きな私立病院などでは最新の医療設備が整備されるなど、医療水準も先進国に匹敵している。当然、先進国より医療費が安く、医療レベルも劣っていないため、近隣の東南アジア諸国から『メディカルツアー』でマレーシアを訪れる人も少なくない。クアラルンプールなどでは日本語が話せる医師や日本人看護婦、日本語通訳が在籍する病院が幾つもある。これらの点が、彼女がビジネスの契約完結の場としてここを選んだ理由だ。
秀麗は、ビジネスクラスのシートを起こすと、アイマスクをはずし、外の雲海を眩しそうに眺めた。彼女の父は、香港で中規模な病院を営む医師である。父の苦労を見ていた彼女は、医師になって父を継ぐ気など毛頭なかった。元来の野心の大きさもあいまって学生時代から、新しいビジネスを求めて模索していた。そして、医療情報システムの勉強で日本に留学した際に秋良と出会った。



