それぞれが何を思おうとこの瞬間は、親子3人が初めて対面した瞬間だ。真奈美の胸の上にいる赤ちゃん、赤ちゃんを抱く真奈美、真奈美の髪を撫ぜながら見守る秋良。その後は、赤ちゃんは新生児室へ連れていかれ、秋良は真奈美に握られて痛む指を振りながら出生証明を取りに出た。ふたりを呼びとめようにも、真奈美にはその力が残っていない。真奈美は後産の処置を受けながら、ばらばらになった3人が、また会うことができるのだろうかと心を痛めた。
真奈美がヘルパーに押されて車いすで分娩室を出ると、用心棒の男達も後をついてきた。病室に入りドアが閉じられると、男達はまたドアの見える廊下にたむろする。真奈美は、疲労の極地にいながらも、言いようのない焦燥感で気が焦っていていた。一刻も早く赤ちゃんを取り戻さなければならないのに、自力で立てもせず車いすに座っている状態ではどうにもならない。秋良だけが頼みの綱であるが、最後のメッセージを彼は理解したのだろうか。
「うまれた子は、あなたの赤ちゃんだったのね。」
真奈美は問いかけられて、窓際に秀麗がいることに初めて気づいた。
「しかも、父親が秋良だなんて…信じられないわ。」
「すみません…。」
別に真奈美が謝る必要はないのだが、秀麗のあまりにも落胆した表情に、詫びる言葉が自然に口に出てしまった。
「あなた、なんで逃げなかったの?」
説明しても理解してもらえまい。真奈美は問いには答えず、うつむきながらか弱い声で言った。
「あの子を取り戻さないと…。」
「今となっては、もう遅いわ。あなたにも、私にももう出来ることはない。あとは秋良がどうするかに懸かっているわね。」
「秋良さんはどうするつもりでしょうか…。」
「私は今まで秋良のことはわかっていたつもりだけど、あなたと出会ってからの彼は、もう何を考えているかまったくわからないわ…。」
秀麗は病室の窓から遠い目で外を眺めた。
「秀麗さんはどうしてここへ?」
「秋良に頼まれたからよ。赤ちゃんの秘密を知っている人間を放ってはおかないお客さんだから、出産が終わったらあなたを隠れ家に連れていくように頼まれたの。赤ちゃんはともかく、少なくとも、あなたのことは心配しているようね。」
「でも子どもを置いては…。」
真奈美がヘルパーに押されて車いすで分娩室を出ると、用心棒の男達も後をついてきた。病室に入りドアが閉じられると、男達はまたドアの見える廊下にたむろする。真奈美は、疲労の極地にいながらも、言いようのない焦燥感で気が焦っていていた。一刻も早く赤ちゃんを取り戻さなければならないのに、自力で立てもせず車いすに座っている状態ではどうにもならない。秋良だけが頼みの綱であるが、最後のメッセージを彼は理解したのだろうか。
「うまれた子は、あなたの赤ちゃんだったのね。」
真奈美は問いかけられて、窓際に秀麗がいることに初めて気づいた。
「しかも、父親が秋良だなんて…信じられないわ。」
「すみません…。」
別に真奈美が謝る必要はないのだが、秀麗のあまりにも落胆した表情に、詫びる言葉が自然に口に出てしまった。
「あなた、なんで逃げなかったの?」
説明しても理解してもらえまい。真奈美は問いには答えず、うつむきながらか弱い声で言った。
「あの子を取り戻さないと…。」
「今となっては、もう遅いわ。あなたにも、私にももう出来ることはない。あとは秋良がどうするかに懸かっているわね。」
「秋良さんはどうするつもりでしょうか…。」
「私は今まで秋良のことはわかっていたつもりだけど、あなたと出会ってからの彼は、もう何を考えているかまったくわからないわ…。」
秀麗は病室の窓から遠い目で外を眺めた。
「秀麗さんはどうしてここへ?」
「秋良に頼まれたからよ。赤ちゃんの秘密を知っている人間を放ってはおかないお客さんだから、出産が終わったらあなたを隠れ家に連れていくように頼まれたの。赤ちゃんはともかく、少なくとも、あなたのことは心配しているようね。」
「でも子どもを置いては…。」



