あまりのタイミングの良さに
少しびくっとして


思わずドアノブを離し


「はっ、はい!!どうぞ!!!」


条件反射で返事をしてしまった



返事の良さはいつも褒められる




(しまった…どうしよう…


知らない場所
逃げ場のない個室…


もしノックの相手が悪い人なら

一瞬で終わってしまう



も、もし、男の人なら
色仕掛け作戦しかない!!!


…って、
私にそんな魅力ないしいいいいい!!!



そうだ。股間を強打しよう。
そうしよう。



でも女の人なら?)


なんて、
そんな事を考えさせてくれる暇もなく





ドアはギィっと小さく音を立て
私の葛藤とは真逆に迷いなく開かれ



少しかがみながら
男の人が入ってきた





その人は遠慮なく
向かい側の椅子に深く腰掛けて

前かがみになり


「…元気そうだね」

目をしっかり合わせ、そう言った





(だ、誰だろう…?

なんか…ダルそうな人だなぁ…。)


怖いとか
知ってる人かなとか

そんな事よりも先に思ってしまうほど
不思議な雰囲気を放っている




(目は綺麗な二重だけど閉じかけそうで

瞬きすらもしんどそう



何しろ雰囲気が…



近づくなオーラってゆうか
話しかけるなオーラってゆうか…



って、
私めっちゃ失礼なやつ!




良いところを探せよ自分!!)



そんな事をもんもんと考えていると





「…なあ、話しかけてるんだから

返事くらいしてくれない?」


男の人は少し冷たく言い放った




勝手に入ってきて
なにさ!!!もう!!


と、口に出しそうになるのを抑え


「すみません。不思議な事が色々起こってしまっていて。

あなたは誰ですか…?

良かったら名前教えてくれませんか?」



人と話すのは得意な方

年上かも知れないから
できるだけ丁寧に

にこっと笑いながら話しかけた






「…相手の名前が知りたいなら

自分から名乗るべきじゃないの?」