悲しまないように。

「百合!お昼食べよー!」


「うん!」


ニッコリ笑う、真中沙彩(マナカサアヤ)は私の親友。


家が隣どおしで、産まれたときからの幼なじみなんだ!!!!


何気ない話をして、お弁当を食べていると沙彩の表情が暗くなった。


「ねぇ、百合。辛くない?」


私の机の上で、お弁当を広げた沙彩が俯きながら言ってきた。


沙彩の表情は、よくわからない。


「んー?何がぁ?」


あ、これおいしい。とウィンナーを食べた。


本当は、どういう意味なのか分かってた。


私は幼い頃から、病気持ちだった。


そして、16歳までしか生きることができないらしい。


私の誕生日まで後8ヶ月。


8ヶ月もすれば、沙彩とも家族ともお別れ。


それを、沙彩は知っている。


カレンダーを見るたび、悲しそうな顔をするから。


それに大好きな先生とも、さようならになる…。


これがきっと、最後の恋。


先生に気持ちが伝わんないのも。


先生との時間が足りないのも。


全部が辛くて、悲しくて。


だけど、私は絶対に言わない。


『好き』とは言っても、


『付き合って』だけは言わないの。


好きな人だから、無責任なことをしたくないの。


まぁ、前向きに考えれば8ヶ月もあるんだし満喫しなきゃだけどね。


「沙彩。私はね、今とても幸せだよ。」


沙彩は何も言わなかったけど、こくんとうなずいた。


今日の卵焼きも、おいしい。