「俺は、置いて来たんだ。
あいつを。」
さーっと風が吹いた。
「置いて来たって、そんな事ないよ。
こっちに仕方なく来たんだし、それにいつでも向こうに遊びに行けるじゃん。」
幡山くんは、少し俯いて
まぁそうだなって言ってた。
「彼女さんの名前は何て言うの?」
「遠野かりん…すっげぇ可愛いよ。
本当俺には勿体無い。」
凄く愛おしそうに彼女さんの話をするもんだから、何だかわたしには微笑ましくて。
「そっかぁ、いいなぁ。
同い年の子なの?」
「うん、タメだよ。中学から一緒だったんだけどさ。
でも向こう居ると会いたくなっちゃうから、俺はこっちに居る方がいいんだ。」
「どうして?会いたくなっちゃってもいいんじゃないの?」
「それじゃあどうしてもダメなの。」
寂しい顔をして幡山くんは
さ、行くかってわたしに手を差し伸べて立ち上がった。
わたしはその手を取り立ち上がって
少し制服についた汚れを落とした。


