喫煙スペースにも
自販機のある休憩スペースにも
荻野さんの姿はなかった。
『どこに行ったの……』
会議室や応接室を見て回っても
荻野さんはいなかった。
『どこ……どこにいるの?』
はやる気持ちを落ち着かせて
冷静に考えた。
誰にも邪魔されずに
休憩するとしたらどこに行く?
荻野さんは何か言ってなかった?
ふと、ある会話が頭を過った。
「どうしてもむしゃくしゃして
上手くいかなくなって
ひとりになりたいときには
ここに来るんだ。
静かだし、誰も来ないし、最高だろ?
春佳にしか教えてないから……
誰にもゆうなよ?」
わたしが仕事でミスをして
落ち込んでいたとき、
連れて来てくれた場所があった。
『あそこだっ』
迷いなく駆け出した。
*

