「外で待たせてしまうこともあったし
これがあれば、俺がいないときでも
来れるかなと思って」

『いいんですか……?』

「いいに決まってる。
なんなら、越してくる?」

『えっ』


なんて、話をしながら笑った。


このころのわたしは
荻野さんが本当にわたしのことを
好きでいてくれて嬉しいような
荻野さんとの関係が深くなっていくのが
複雑に思ってしまうような
よくわからない感情に支配されていた。


職場ではいつもと変わらず
敬語で話していたし、
名字にさん付けで呼んでいた。

仕事に支障をきたすことは
何もなかったはずなのに……

わたしはひとつ困ったことがあった。