付き合ったからといって
わたしたちの関係が
大きく変わることはなかった。

社内恋愛が禁止な訳じゃないけど
なんとなく誰にも言わないままだったから
様子の変わらないわたしたちのことに
気付く人はいなかった。


ひとつ変わったとしたら
荻野さんの家によく泊まりにいくように
なったこと。


「今日、来れる?」

『仕事終わったら行きます』


こんな会話やメールを
仕事終わりに何回もしているうちに
荻野さんがあるものをくれた。


「はい、これ」

『……え?』


荻野さんの家の合鍵だった。