side荻野

高山に背を向けて少しして
アパートに入った音を聞いてから
立ち止まって振り返った。


「……ふぅ」


知らぬ間に緊張していたのか、
溜まっていた息を一気に吐き出した。


今の会社に勤めて5年目の春、
人事異動を言い渡された。

そこには、この春に入社してきた
新人の高山がいた。

挨拶の場で俺を見つけたとき、
一瞬、微妙な顔をしたのを
見逃さなかった。

理由は……なんとなく検討がついた。