『もう……なに?』

「いや、別に」

『えー?』

「今日は、早く帰れそうだから。
一緒に飯食おうな」

『そうなんだ?
うん、一緒に食べよう』


わたしたちは荻野さんの家で
一緒に暮らすようになった。

忙しい中でも
いつでも会えるように。

一緒に暮らすようになって
わかったことがまたひとつ。

荻野さん、意外と甘えたなところがある。

そんなこと言ったって
荻野さん自身は信じないだろうし、
中川さんはまた、キモい!と叫ぶだろう。

でも、新たに見つけられた一面が
わたしは嬉しかった。


『荻野さ……
颯大さん、用事はそれだけ?』

「え?」

『ここは職場ですよ。
ちゃんと仕事してくださいね。
夜、楽しみにしてますから』

「……おう。」


にっこり笑って、
荻野さんのそばを離れて
席に戻った。