『わたし、好きな人がいるんです』

「……え?」

『その人は……
仕事に関してとても厳しくて
相手が誰であろうと容赦なくて
最初は怖かったし苦手な人でした。
でも、本当は優しい人だと知りました。』


どんなわがままも許してくれて、
その優しさに甘えてた。

でも、その優しさのおかげで
今まで考えられなかった思いを
知ることが出来た。

この先も一緒に……初めてそう思えた。


『でも、その人からの思いを
素直に受け止めることが出来なかった……
怖くなったんです……
ふとした瞬間、気付くんです。
変わったんじゃない……
忘れてただけなんだって。
思い出したら……
自分は何してるんだろうって、
その人の優しさに甘えて
ずっと一緒にいたら
その人の未来を奪ってしまうんじゃないか、
幸せになる邪魔をしているんじゃないか、
そう思ってしまったんです。』


静かに耳を傾けてくれている荻野さん。

どう思っているのかわからないけど……
こんなときに言うことじゃないけど……

でも、