食べ終わって帰ろうとしたとき 荻野さんはなにも言わずに 同じ方向に歩き出した。 『家こっちなんですか?』 「まー、そんなとこ」 『え?』 「あー、もう。 送ってくって言ってんだよ」 『え!いや、そんな、いいですよ!』 「一応、女だろ?送られとけ」 ぶっきらぼうな言い方だけど いつもより優しい言葉に 少しだけドキッとした。 人付き合いを積極的にする方ではないし、 もともと荻野さんに対して 苦手意識を持っていたこともあって、 虚をつかれた気がした。 *