き み さ え い れ ば 。


食べ終わって帰ろうとしたとき
荻野さんはなにも言わずに
同じ方向に歩き出した。


『家こっちなんですか?』

「まー、そんなとこ」

『え?』

「あー、もう。
送ってくって言ってんだよ」

『え!いや、そんな、いいですよ!』

「一応、女だろ?送られとけ」


ぶっきらぼうな言い方だけど
いつもより優しい言葉に
少しだけドキッとした。

人付き合いを積極的にする方ではないし、
もともと荻野さんに対して
苦手意識を持っていたこともあって、
虚をつかれた気がした。