最初は、本当に一服だけして
仕事に戻るつもりだった。
でも、喫煙スペースには4~5人いて
どうにも気を休められるような
感じではなかった。
仕方なく、自販機でコーヒーだけ買って
エレベーターへと向かった。
休むなら、誰にも邪魔されずに
ひとりで静かに休めるところに行きたい。
入社してすぐのころに見つけた
秘密の場所があった。
「ふぅ」
ビルの最上階から
1つ降りた階の非常階段の前。
最上階から下3階分のフロアには
何の店や企業も入っておらず
空きフロアになっていた。
立ち入り禁止になっている訳でもないし、
工事する予定がある訳でもなく、
もちろん誰も来ないから
俺にとっては格好の休憩場所だった。
窓を少し開けて外の空気を吸う。
天気が良く、太陽が眩しかった。
一服しようと
ポケットに手を入れてタバコを出した。
火をつけようとした途端、
視界が歪んだ。
「、え」
太陽の眩しさがやけに目についた。
カシャン、と
ライターが滑り落ちた音が聞こえた。
side荻野end
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